1年後の2003年9月16日、朝鮮外務省スポークスマン談話で、「被害者の個人補償は残っている」と発表し、その受け皿になる朝鮮人強制連行被害者・遺家族協会が結成されている。

 現在の朝鮮政府においてピョンヤン宣言のこの部分の見解は修正されていると見ることができよう。
 

真の改善を目指すなら三党共同宣言の理念を再認識するべき

Q 今年で三党共同宣言から30年経ちますが、日朝交渉は膠着状態にあります。三党共同宣言はどのような形で生かされているのでしょうか。

 朝日首脳会談における日本人拉致問題の公表を機に日本では反朝鮮キャンペーンが大々的に繰り広げられ、朝日間の国交正常化交渉は膠着状態に陥ってしまった。また、核実験、ミサイル発射を理由とした国連の制裁、米国や日本の単独経済制裁のため、現在、朝日関係は最悪の状態にある。その中で、在日朝鮮人に対する教育差別、ヘイトスピーチなど人権侵害が深刻な状況にある。

 このような中で三党共同宣言は、ほぼ忘れ去られているように思う。

 朝鮮政府や過去清算問題に携わっている市民運動側もピョンヤン宣言については強調するが、三党共同宣言についての言及は少ない。

 しかし、朝日関係の真の改善を目指そうとするならば、その理念は三党共同宣言に示されていることを再確認すべきだと思う。

2018年韓国大法院も三党共同宣言を間接的に継承か?日朝交渉再開に向けて

 2018年、韓国大法院は「不法な植民地支配および侵略行為の遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為」に対する強制労働被害者の損害賠償請求権を認め、賠償を命ずる判決を下した。

 この判決が出てくるまでになった背景は、1.韓国で民主化が進み、「過去の清算」事業が進んだこと、2.過去清算に関連する国際的な諸運動の影響、3.研究上における「不法な植民地支配」論の深化がある。

 同時に、この大法院判決は、「日本の植民地支配に対して公式的に謝罪し十分に償う」とした三党共同宣言の内容にそうものである。植民地支配責任問題は朝鮮半島の南側、北側と分けることができないことから、三党共同宣言を間接的に継承していると考えることができるのではないか。

 三党共同宣言発表30周年にあたる今年の初めに、三浦洋子著『金丸信のめざした日朝国交正常化―金丸家所蔵文書より』(山梨ふるさと文庫)が出版された。金丸信氏の御子息である信吾氏へのヒヤリング、金丸信と金容淳往復書簡などの金丸家所蔵文書に基づいて書かれているため、これまで知ることができなかった新しい知見が多い。

 この先、近い将来、朝日国交正常化交渉が再開されるに違いない。そのために、改めて三党共同宣言を想起し、この30年間の様々な経緯をたどりながら、真の朝日関係改善を実現することを願ってやまない。
 
 
康成銀朝鮮大学校朝鮮問題研究センター研究顧問
1950年大阪生まれ。1973年朝鮮大学校歴史地理学部卒業。朝鮮大学校で歴史地理学部長、図書館長、副学長、朝鮮問題研究センターのセンター長を歴任。現在は同センターで研究顧問を務めている。
 

八島 有佑

記事に関連のあるキーワード

こんな記事も読まれています

コメント・感想

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA