ドイツの研究所がネイチャーへ発表

ドイツの研究所がネイチャーへ発表

韓国語と中国語(簡体字)、日本語で表記される屋台のフードメニュー

 「韓国語の起源は9000年前、中国北東部遼河の農耕民族」というタイトルの記事が、朝鮮日報日本語版で配信された。

 それによれば、韓国語は、日本語やモンゴル語などとともに新石器時代の中国東北部に住んでいた農耕民の言語がルーツになっているという。

 また、これと同時期に毎日新聞からも「日本語の原郷は『中国東北部の農耕民』国際研究チームが発表」と、似たような記事が配信されている。

 日韓の記事はネタ元が同じ。ドイツのマックス・プランク人類学研究所が、日本や韓国など10か国の学者を集めて行った研究によるものだ。今年11月11日に国際学術雑誌「ネイチャー」でその研究論文が発表されている。

 日本語と韓国語は似た部分が多い。同じルーツをもつ言語だとは、昔からよく言われてきた。

 その発祥地が、中国東北部に突き止められたというのが、今回の研究の成果だろうか。

 しかし、日本語や韓国語の発祥については他にも諸説あり、この話をうのみにはできない。

日本語はいまだ謎多き孤立言語

 日本語と韓国語はどちらも、ウラル・アルタイ語族に分類される。

 西シベリアからモンゴルに広がる地域で発生したこの言語は、民族の移動によりユーラシア大陸の広範囲に分散してモンゴル語やトルコ語、日本語、韓国語などに枝分かれして、世界3大言語の1つになった。と、いうのが昔からの定説である。

 研究論文では、このウラル・アルタイ語を話す一族が、中国東北部の遼河流域で農耕をするようになったという。

 その後、彼らの一部が、新たな土地を求めて朝鮮半島や日本列島に広がり、日本語や韓国語に進化したということだ。

 つまり、日本語も韓国語も中国が起源。農地を求めて移動していなければ、日本人や韓国人は、今も中国の少数民族として暮らしていたのか。そんなことを思ったりもする。

 しかし、近年では、日本語や朝鮮語はウラル・アルタイ語族に含まれない「孤立した言語」だと主張する研究者が増えている

 日本語については、中国南部や東南アジアなどに分布する南方言語との共通点も多く、日本語南方起源説を支持する人々も多いようだ。

 また、日本語と韓国語のルーツが共通だということについても、近年では否定的な学説も出てきているようだ。

 日本語と韓国語が近い言語というのは、これも昔からよく言われてきた定説。大正時代には、言語学者の金沢庄三郎による『日韓両国同系論』が出版され、日韓併合を正当化する論拠にもなっていた。

 確かに文法的な類似は多い。が、対照言語学の分野で細かい部分を精査すると、同じ系統の言語とは言えないのだとか。

「新発見」の公表には何か意図がある?

 こんな具合で日本語の起源については諸説あり、今後も色々な「新発見」はあるだろう。

 しかし、現在のところ、それらの説を裏付ける確たる証拠はない。「発祥不明の孤立した言語」と、いうのが現状だろう

 日本語や韓国語のルーツを「中国東北部」としたドイツ発の研究発表は、果たして、純粋に学術目的なのか。それとも、どこかの国や組織の政治的意図が含まれているのか。

 また、日韓の新聞社が、同時期に似たような記事を配信したことについても、偶然なのか、何かの意図や目的があるのか。

こちらについても、色々な憶測が流れている。けど、日本語のルーツと同様で真実は、まだわからない。

 個人的には、日本語や韓国語の発祥よりもこちらのほうが気になって、あれこれ推察してみたりもする。純粋に研究にいそしんでいる人々には、失礼なゲスの勘ぐりなのだが…。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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