日朝交渉への地ならしに必要なこと

 たとえば、2002年の平壌宣言では、日本の過去清算、在日朝鮮人の法的地位および民族的権利に関する問題、文化財の問題、朝日共通の懸案問題(拉致問題)などが議題として挙げられている。

 このような朝日交渉は、ただ「北朝鮮」との関係だけにとどまるものではなく、1965年の「韓日条約」を正すなど、朝鮮半島全体との健全な関係に進む道につながるものだ。

 だが、日本政府は(徴用工問題に関する)韓国大法院判決を受け、今回のG20で文在寅大統領と会談しようともせず、(自由貿易の促進という)G20の精神に反して半導体核心素材などの対韓輸出を規制するという事実上の制裁措置を行った。言葉では朝日交渉再開と言いながら、行動では真逆のことをしていると言える。私には安倍首相の言葉と行動は植民地主義的なものであり、朝鮮をみくびっているとしか思えない。

 日本政府は共和国に無条件対話を提起しているが、自国の過去清算については何も触れていない。日本政府はどこかで、「北朝鮮は経済困難だからカネを欲しがっているのだろう」と考えているのではないか。

 日本側が朝日交渉を再開させることを望むならば、最初にできることは在日朝鮮人に対する制裁措置(再入国禁止など)をすぐにでも解除することである。そうすれば、共和国側も朝日交渉を再開する可能性が高いし、交渉が進めば大きな議論の中で拉致問題も進展し、日本にとってもプラスになる。2014年のストックホルム協議の時点に立ち戻ることができるだろう。

板門店会談は再出発の第一歩か。日本は朝鮮半島情勢にどう関わっていくのかに注目

 今回の米朝首脳会談に対しては肯定的意見も多い一方で、米国内外からは「トランプ大統領のパフォーマンスだ」と否定的な意見も寄せられている。

 だが、康成銀氏が述べているとおり、停滞していた米朝交渉に再びエンジンがかかったというだけでも大きな意味があったのではないか。板門店会談の是非は今後の米朝交渉の動向いかんと言ってもよい。今月、再開される米朝実務者協議に期待したい。

 一方で、日本政府は拉致問題の解決を図る上では北朝鮮との対話を進めることが必要であるという姿勢を示しているが、公式な発表を見る限りでは今のところ進展はないようだ。実際のところ、日本政府としてはあらゆる手を打ってでもすぐに北朝鮮と対話したいと考えているのか、それとも今は米朝交渉および非核化協議の経過を注意深く静観しているのかは分からない。

 今後、日本がどのようなスタンスで朝鮮半島情勢に関わっていくのかにも注目していきたい。

康成銀朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長
1950年大阪生まれ。1973年朝鮮大学校歴史地理学部卒業。朝鮮大学校歴史地理学部長、図書館長、副学長を歴任。現在は朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長を務めている。

八島有佑

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