北朝鮮と韓国のトップ会談による板門店宣言から1年経った現在の半島情勢をどう評価すべきか

北朝鮮と韓国のトップ会談による板門店宣言から1年経った現在の半島情勢をどう評価すべきか

4.27南北首脳会談が行われた板門店

北朝鮮と韓国のトップ会談による板門店宣言から1年経った現在の半島情勢をどう評価すべきか

 2018年4月27日は朝鮮半島にとって重要な1日となった。北朝鮮の金正恩委員長と韓国の文在寅大統領が板門店で会談を開き、今後の朝鮮半島の指針となる板門店宣言を発表した日である。

 この出来事は世界に大きな衝撃を与え、国際社会は朝鮮半島の情勢が急激に進展するのではないかという期待を寄せた。
 
 だが、それから1年。今月4月27日に大きな記念式典が行われるという情報はまだなく、南北関係はやや微妙な雰囲気が漂っている。

 また、金正恩委員長は4月12日、最高人民会議での演説で韓国に対して非難した。「差し出がましく『仲裁者』や『促進者』のように行動するのではなく、民族の利益を擁護する当事者になるべきである」、「韓国当局は口だけではなく、実践的な行動でその誠意を示す勇断をくだせ」と言及している。

 この声明を引用する形で、韓国内外では「金正恩委員長は米朝交渉が進まないため文在寅大統領を切り捨てた」という見解も出ている。
 
 現在の朝鮮半島情勢をどのように評価すればよいだろうか。朝鮮近現代史の専門家である康成銀朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長に見解を伺った。

膠着状態にある米朝・南北関係。金正恩委員長の韓国非難の真意は?

Q  現在米朝関係及び南北関係は膠着状態にあると言えますが、どのように情勢をご覧になっていますか。

 昨年、北南首脳会談、朝米首脳会談が実現し、共同声明が発表されるなど、朝鮮半島の平和への道が大きく開かれた。その勢いに比べると、現在は膠着(こうちゃく)状態にあると言える。

 しかし、70年にもおよぶ世界でも類例を見ない強固な対立関係にあったことを考えると、そのことで一喜一憂することはない。金正恩委員長もトランプ大統領も、互いの計算法が異なっていたといいながらも、当分の間、交渉を継続すると言明している。これからは互いの計算法を接近させていくのではないか。

 これからが本当に困難な交渉局面に入っていくだろう。しかし、後戻りはできない。若干時間がかかるが徐々に進んでいくと思う。

Q 金正恩委員長は韓国を強く非難しています。

 板門店宣言と平壌共同宣言を履行するうえで、韓国当局が制裁項目に抵触するという理由で限定的にしか行っていない現状に対する批判だ。

 今の韓国当局は、韓米間の対朝鮮制裁の名分に束縛されており、そこからの打開を見いだせていないと思う。朝鮮半島の平和は、米国との交渉にかかっている。そのためには、韓国当局が一歩踏み出て、対米自立性を確保するがカギになる。
 
 そのことによって、北南関係改善の雰囲気が引き続き生きていくだろう。北南共助の発展が、朝米関係を促進し朝鮮半島の平和を進展させてきたのが昨今の歴史だ。韓国当局への非難は、裏を返せば期待のあらわれであろう。

板門店宣言から1周年行事は行われるか4月27日に注目

Q 板門店宣言1周年行事が行われるものと考えていましたが、いまだ発表はありません。

 文在寅大統領は15日の首席補佐官会議で、「北朝鮮の都合に合わせ、場所や形式にこだわらず、南北首脳会談を推進する」、「朝米首脳会談を越える進展した実を結ぶ案を協議する」、「韓国政府はいかなる困難があっても、南北共同宣言を着実に履行する明確かつ確固たる意志を持っている」と述べた。

 昨年4月27日の北南会談は劇的なものであったのだから、たとえ現在難しい局面であるとはいえ、何もしないというのは考えられない。近々特使団が派遣されるとのことだ。3月に新しく就任した金錬鉄統一部長官がその中に入る可能性もある。

 当面、4月27日が注目されるだろう。

 康氏の見解の通り、北朝鮮側が韓国を非難する背景には、米朝交渉における韓国の働きに大きく期待している部分があるのかもしれない。

 少なくとも、韓国への非難をもって南北関係が悪化したとは必ずしも言えない。

 板門店宣言一周年まであともう少し。今年の4月27日は朝鮮半島にとってどのような日になるのだろうか。

康成銀朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長
1950年大阪生まれ。1973年朝鮮大学校歴史地理学部卒業。朝鮮大学校歴史地理学部長、図書館長、副学長を歴任。現在は朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長を務めている。

八島有佑

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