タイは非常事態宣言でバンコクの商業施設は休業に

タイは非常事態宣言でバンコクの商業施設は休業に

飲食店は店内での食事提供ができず、とりあえず店員が出勤するものの、席に座って暇を持て余していた

 東南アジア各国は新型コロナウイルス「COVID-19」への対策が厳しく、いち早く外国人の入国を規制する動きが3月中旬から始まっている。タイも3月26日から非常事態宣言が発せられ、基本的に外国人は入国できないような状態になった。

 それに先駆けて、タイは3月22日からバンコク都を始めとした多数の県で飲食店の店内での食事提供が禁止されている。各県で対応が違うが、たとえばバンコクは4月12日までと期限を区切り、人が集まる施設や店、商業施設が強制的に休業となった。これらの命令は今後延長される可能性も高く、タイ経済に大きく影響する上、多くの失業者を生み出す可能性もある。

テイクアウトとデリバリーのみが許可の飲食店が悲鳴を上げる

テイクアウトとデリバリーのみが許可の飲食店が悲鳴を上げる

コーヒーショップで一般客に混じってグラブフードの配達員が待っていた

 ただ、スーパーマーケットでは食品の販売スペースは営業が可能で、飲食店もテイクアウトやデリバリーに限り営業を続けることが許された。このほか、銀行や薬局など、生活に必要なものに関しては営業が許可されている。これらも、非常事態宣言が4月末までとなっていることから、ある日突然取り消される可能性も残っており、タイ人だけでなく在住外国人も日々、タイ政府の発表に注目している。

 営業停止や非常事態宣言が出されるにあたり、翌日あるいは翌々日など猶予があったため、発令当日や翌日こそ混乱があったが、タイ政府から物流は止まっていないことなどを理由に買い占めなどをしないよう呼びかけ、現状は若干の品薄商品があるものの、大きな問題に到っていない。

 いずれにしてもタイ国内では毎日100人もの新規感染者が出ていることから、新型コロナウイルスの猛威に怯え、多くが外出を控えている。そのため、テイクアウトを許されているとはいえ、飲食店の多くは売り上げが上がらず、悲鳴を上げている。

2大デリバリーアプリ利用者が急増し大盛況

2大デリバリーアプリ利用者が急増し大盛況

パソコン版は日本語対応しているフードパンダ

2大デリバリーアプリ利用者が急増し大盛況

 そんな中で逆に大盛況となっているのがデリバリーアプリに登録している配達員たちの仕事だ。スマートフォンのアプリから加盟店の食品を注文でき、最寄りの配達員がそれを引き取り、指定場所まで運んでくれる。

 タイではタクシーの配車アプリである「グラブ」が提供するサービス「グラブフード」や、シンガポールから来たタイのフードデリバリーアプリの草分けである「フードパンダ」が人気だ。飲食店の中には一般客がほぼゼロで、配達員だけしか来ない店もあるほど、今、バンコク在住のタイ人や外国人に利用される。配達員との接触は避けられないが、必要最低限の接触で食料を確保でき、店で食べられるメニューが自宅でも食べられるため、近年、すでに利用者が多かったが、この事態で利用者、加盟店がさらに急増している。

韓国料理店も加盟が急増中。平壌冷麺も自宅で楽しめる?

韓国料理店も加盟が急増中。平壌冷麺も自宅で楽しめる?

日系企業が多いアソーク通り近くの北朝鮮レストランもデリバリー注文が可能だ

 配達で人気なのはコーヒーや軽食などのほか、タイ料理や和食だ。日本人経営の居酒屋などは、これを機会にデリバリーサービスを独自に始めたり、アプリに加盟してサービスを開始している。

 「韓国料理もこの中では比較的人気のあるジャンルだ」

 と、デリバリーアプリを利用する日本人が話している。フードパンダは、韓国料理店の加盟はかなり少ないが、「グラブは和食と同じくらい韓国料理が充実している」というほど加盟店がある。

 喜び組が踊ることで話題になった北朝鮮料理店は、肝心な北朝鮮籍の女性従業員に対する労働許可証の問題などで働き手がおらず、2019年には経営が風前の灯火になっていたが、やはりグラブに加盟してデリバリー対応を始めた

 今後、この新型コロナウイルスの猛威が収まり、バンコクが平常時に戻ったとしても、飲食店の経営スタイルは大きく変化しそうな兆しを感じる。

北レス玉流レストランの人気平壌冷麺もデリバリーで自宅で楽しめるように

高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』、近著『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレスなど。
@NatureNENEAM

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