併用式の前に存在したもう1つの北朝鮮の呼称

併用式の前に存在したもう1つの北朝鮮の呼称

時代とともに変わる北朝鮮の呼称問題

 北朝鮮の呼称についてもう少し深堀りしたいと思う。

 2003年から主要メディアすべてが現在の北朝鮮という呼称に統一されている。その前には、朝鮮民主主義人民共和国との併用で呼ぶ時代があった。さらにさかのぼると違った呼称が存在していた歴史をご存知であろうか。

 今の60代以上の人は今でも普通に使っていて発音だけ聞くと、一瞬、何言っているか分からない状態になる。

60年ほど前は一般的だった北鮮

 あまり北朝鮮の呼称の歴史についての資料がないのではあるが、参考になりそうなサイト(いまだに「北朝鮮」と呼ぶ日本のメディア、呼称変更史と時代背景)によると、おおよそ戦後から1959年(昭和34)ごろまでは、北朝鮮は一般的に「北鮮(ほくせん)」と呼ばれていた。

 その後、どのような呼称が一般的に使用されていたかを70代以上で当時から朝鮮半島に関わりがあった人たちに聞くと、北鮮、北朝鮮などが混在して使われていたようだ。そもそも日常的に目にするテレビや新聞で北朝鮮が話題となった記憶がないという話も聞かれた。

 確かにそうだろう。当時、北朝鮮も中国も国交がなければ、米ソ冷戦で西側との接触は少なく、政策も鎖国的で民間交流も限られていたから話題になることは非常に少なかったと思われる。

日韓国交樹立後に北朝鮮の呼称が固定

 日本は1965年(昭和40)に韓国と国交が樹立し、在日朝鮮籍の人たちが正式な国籍として承認された韓国籍を選ぶ人増え始めた。

 韓国との国交樹立で日本国内の在日朝鮮人、韓国人の中でも北朝鮮支持派と韓国支持派で対峙していくことになる。

 その影響か、1968年(昭和43)ごろから北朝鮮との呼称が主に使用されることになったようだ。
 
 1972年(昭和47)の札幌冬季オリンピックの前年に北朝鮮側から正式名称を使うように申し入れをした結果、1971 年(昭和46)から主要テレビ局や新聞は併用式が始まることになることは以前にご紹介した通りである。

 以前の記事をさらに補足すると、上記の併用式を最初に止めたのは、『産経新聞』(1996年)、『読売新聞』(1999年)、『朝日新聞』、『毎日新聞』、『日本経済新聞』(2002年)、そして最後が2003年元日の「NHK」との時系列となる。

 公共性が高いとは言え民間企業がどんな呼称を使うは各社の決めることになるだろう。公共放送であるNHKはどうなのだろうか。

北朝鮮紹介に正式国名なしの外務省公式サイト

 さらに言えば、外務省の世界各国の紹介では、

北朝鮮
North Korea
 
 のみで国の概要紹介である一般事情にも正式国名が書かれていない(北朝鮮|外務省)。外務省のサイトは学習目的で子どももアクセスするだろう。いくら国交がないとはいえ、国の公式サイトとしていかがのものか、さすがに疑問に感じてしまう。

 北朝鮮は日本に対して敵視政策を止めよ主張する。多くの日本人はそんなの言いがかりだと思っているだろう。しかし、これで無条件で対話を呼びかけても…と思ってしまう。

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