北朝鮮の自動車事情

北朝鮮の自動車事情

平和自動車・ポックギII 出典 Michal Dokoupil [Public domain], via Wikimedia Commons

北朝鮮の自動車事情

 最近、金正恩氏が水害にあった南西部を高級自動車「レクサス」で視察したことが話題を集めた。自ら現地に行くことで国民に行動力をアピールする狙いがあったようだが、それよりも北朝鮮の自動車事情に興味を持った海外メディアやユーザーは少なくない。私自身も気になったので、今回は北朝鮮の自動車事情について調べてみた。

北朝鮮以外ではレア車な平和自動車。大衆車製造メーカー

 北朝鮮の有名自動車メーカーと言えば「平和自動車(ピョンファじどうしゃ)」。日本ではあまり聞きなじみはないが、北朝鮮人にとってはメジャーな自動車メーカーだ。ミニバン、SUV、ピックアップトラックなど様々なタイプの自動車を製造している。

 主に大衆向けの自動車を製造しており、北朝鮮国内での販売がメインとなっているため日本で見かけることはまずないだろう。また、日本国政令である「輸出貿易管理令」に基づいて作成される「外国ユーザーリスト(名称『Peace Motors Corporation』、『Pyonghwa General Motor Company』、懸念項目『生物、化学、ミサイル、核』リスト番号『395』)」に掲載されているため、同社への貨物や技術の輸出は許可申請が必要となる。

経済制裁で部品調達が困難

 ちなみに2017年時点のソースが古い情報になってしまうが、ドイツの「ドイチェ・ヴェレ」(中国語版)では同社について「2012年から独自生産ができない状態となっている」と報じている。

 中国の自動車市場の専門家のエリック・ファン・インゲン・シェナウ氏は「生産を続けている車種もあるが、中国製の部品を輸入し組み立てるだけとなっている」とコメント。それも完成したものにタイヤ、バッテリー、エンブレムを装着するだけだという。

 さらにシェナウ氏は「北朝鮮の自動車工業は、量的にも技術的にも初歩段階で、軍事用車両に偏っており、民生用の生産数は非常に少ない。さらに国際社会の制裁で、部品の調達も困難になっている」とコメントしている。

製造される80%がトラック。勝利58号が代表格

製造される80%がトラック。勝利58号が代表格

子どもたちの送迎に利用される勝利58号 出典 Roman Harak [Public domain], via Wikimedia Commons

製造される80%がトラック。勝利58号が代表格

 北朝鮮国内における自動車の大部分を生産している工場が「勝利自動車工場」だ。1958年に開発された「勝利58号」をはじめ、10トン、25トン、40トンダンプカー、バス、ジープ型自動車を生産している。

 驚くことに北朝鮮で使用されている車両の80パーセントはトラックだ。勝利58号は中型のトラックで、構造が単純なことから製造、修理が容易であり50年経過した今でも生産されている。トラックの生産に重きを置いているため、自家乗用車の生産は少ない

 ご存知の通り、北朝鮮の高級自動車は大部分が輸入車だ。おもに日本車やドイツ車、「日産」、「トヨタ」、「ベンツ」、ロシアの「ヴォルガ」などが主流だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で自動車事情も大きく変化するだろう。今後の動向も追って報告したい。

井上 一希
フリー編集者。マガジンハウス「anan」、宝島社「sweet」、読売新聞ライフスタイルページの編集担当。好きな食べ物は「冷麺」。

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