韓国政府からの生活支援の先細りも背景に

韓国政府からの生活支援の先細りも背景に

脱北ユーチューバーのチャンネルが急増している

韓国政府からの生活支援の先細りも背景に

 ここ数年、韓国では「ユーチューブ」で発信する人が急増している。通信費が安いため、携帯で気軽に視聴できるからだ。政治関係の番組も無数に登場している。その中で目を引いているのが、北朝鮮からの脱北者が行っているものだ(以前KWTでも取り上げた「韓国の既存メディアへ異論 百家争鳴、保守論客がユーチューブで活躍中」もご参照)。

 筆者は、ほぼ毎日見ている。独自のニュースソースを使って北朝鮮の内部情報を伝えるものや、韓国で始めた生活で感じた戸惑いを語る人もいる。すでに脱北者は3万人を超え、韓国政府からの生活支援も先細りしており、自活せざるを得ないことが背景にあるようだ。

 私が見ているものを紹介したい。ほとんどは韓国語のみだが、一部英語の字幕がついているものがある。

土曜日にライブ放送。正恩氏めぐる秘密暴く

 ニュース系で安心して聞けるのが、チュ・ソンハだ。大手紙『東亜日報』の国際部に勤務し、北朝鮮に関する分析記事を書いている。北朝鮮の「金日成総合大学」を出たインテリでもある。苦労して中国から韓国に入国した(チュ氏に関する関連記事は文末でご紹介)。

 放送内容は、北朝鮮内部の動向だが、「根拠のない噂は話さない」という主義だといい、驚くような内容というよりも、北朝鮮をめぐるニュースの背景分析などが中心だ。土曜日午後には3時間ほど、ライブ放送も行っている。

 9月8日には北朝鮮で起きた美人女優、ウインヒの公開処刑について語り、115万のアクセスを集めている。

チャンネル登録者数 16.9万人
주성하TV

 続いて信頼できるのがアン・チャンイルの「トップシークレット」。アンは、日本のメディアにもよく登場する。元軍人で、韓国で博士過程を終えた。

 ニュース志向で、よくスクープと銘打って正恩氏に関する秘密を暴く。番組の中でも「北朝鮮の中のヒューミント(協力者)によれば」と断っているので、情報網があるようだ。最近では、正恩氏の妻、李雪主氏に関するスキャンダルが平壌で出回っていると伝え、32万のアクセスを集めた。

チャンネル登録者数 14.7万人
안찬일TV

脱北者知名度No.1が語る正恩氏が消えた?

 脱北者としての知名度なら、この人が一番だろう。康明道氏だ。ユーチューブで映像を盛んに流している。康氏は、北朝鮮の首相を務めた姜成山の親族で、金ファミリーとも近かった。1994年に脱北した際、北朝鮮の核開発について証言し、世界的な注目を集めた。

 番組内容は、刺激的な内容が多いが、政治的なアピールが前面に出ており、個人的な希望を語っているのか、事実を語っているのかややあいまい。

(続く)

五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)、近著『新型コロナ感染爆発と隠された中国の罪』(宝島社、2020年・高橋洋一らと共著)など。

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