日本政府の処理水放出を繰り返し非難する北朝鮮

日本政府の処理水放出を繰り返し非難する北朝鮮

2020年9月26日、東京電力福島第1原子力発電所を視察する菅義偉首相 出典 首相官邸ホームページ

日本政府の処理水放出を繰り返し非難する北朝鮮

 日本政府は4月13日、東京電力の福島第1原子力発電所に貯蔵されている放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋放出することを決定した。

 菅義偉首相は「福島第1原発の廃炉を進める上で避けては通れない課題」とした上で、「基準をはるかに上回る安全性を確保し、政府を挙げて風評対策を徹底することを前提に海洋放出が現実的と判断した」と説明した。

 この判断について日本国内でも賛否両論ある中、韓国や中国など海外の1部の国からも非難が寄せられている。

 日本と海を隔てた隣国である北朝鮮も例外ではなく、北朝鮮メディアは繰り返し日本政府の決定を非難している。北朝鮮側の主張の根幹にあるのは、「日本政府の『処理水は安全』という主張は嘘」「処理水海洋放出は全世界の人々を危険にさらす犯罪行為で即時撤回すべき」というものである。

海洋放出は「犯罪」として即時撤回を求める

 処理水放出決定に対する北朝鮮の公式的立場は、日本政府発表の2日後の4月15日に示された。同日、国営メディア・朝鮮中央通信が日本政府の処理水海洋放出の決定を非難する論評を掲載したのである。

 論評では、処理水の海洋放出は「人類の健康と安全、生態環境を脅かす許せない犯罪」と断じている。日本政府は「安全性に問題ない」としているが、論評は「危険な放射能汚染水を、浄化工程を経た清潔な処理水と宣伝している」と日本政府の説明を真っ向から否定。

 日本海に接する北朝鮮にとっては「人民の生命安全に関わる重大な問題」であり、「人類共同の富である海の生態環境を破壊する」ことになると警告して、放出決定の即時撤回を求めた。

 後述するが、北朝鮮はあくまで「全世界の人々の生命を脅かす」と一貫して強調している。

「不法国家」と日本を非難

 26日には朝鮮外務省日本研究所のチャ・ヘギョン研究員も外務省公式サイトに非難談話を発表した。

 談話では、福島県の海岸は「世界的に海流が速い」とし、「数か月で韓国・済州島周辺の海域が汚染」「1年以内には日本海や太平洋全体が死の海になる」と分析。

 日本はかつてイタイイタイ病や水俣病などの各種公害病を流行させた前歴があるとして、「日本政府は利己的な目的実現のためなら自国民の生命安全はもちろん、全人類を犠牲にする行為もいとわない不法国家」であると非難。よって日本政府が強調する「処理水は安全」という主張は、信用できないものであるとして、改めて海洋水放出の撤回を求めた。

原発事故後の日本政府の対応を糾弾

 このように北朝鮮側は、日本政府の「処理水放出は安全が担保されている」という説明をまったく信頼できないものと主張している。その不信感の理由として、政府機関紙・民主朝鮮は27日の論評で、福島第1原発事故を巡る日本政府の対応をあげている。

 論評は、2011年3月11日の東日本大震災による福島第1原発事故により、放射線被害で多くの人の健康や生命が脅かされ、10年経った今でも日本は事故の後遺症に悩まされていると説明した。その直接的な原因は、事故以降の日本政府の対応にあったと指摘している。

 日本政府が「東京電力(東電)に責任を押し付け、国家的対応を遅らせた」ことで今もなお被害が続いていると言うのだ。そのような日本政府が、次は海洋に処理水を放出することで「全人類に放射線被害を拡大」させようとしていると強く糾弾。「全人類に対する犯罪行為」と結論づけた。

 さらに、同論評は、中国政府やロシア政府、その他海外専門家が日本政府の決定に反対していると紹介。日本政府の決定に対して国際社会に懸念が広がっており、「日本政府は責任ある姿勢に出るべき」と促している。

 

処理水海洋放出を国際問題化

 このように北朝鮮側は、処理水の海洋放出を北朝鮮や近隣国だけの問題ではなく、全世界的な問題として議論しており、今後、国際社会が共同して日本に対応すべきという姿勢を見せている。

 日本政府が海洋放出を撤回しない限り、北朝鮮は、処理水海洋放出を国際問題化して繰り返し日本に再考を迫るものとみられる。

 北朝鮮はこれまで繰り返し日本の安保政策や歴史認識問題に非難を加えてきたが、これにまた1つテーマが加わることになる。

八島 有佑

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