大韓民国軍陸軍 出典 대한민국 국군 Republic of Korea Armed Forces [Public domain], via Flickr

 文在寅(ムン・ジェイン)政権も残すところあと1年を切った韓国では、次期大統領選挙出馬を目指す候補たちの言動に話題が集まるようになってきた。中でも若者たちがひときわ注目するのが、「男女平等服務制」の兵役導入を公約にしている朴用鎮(パク・ヨンジン)である。与党・共に民主党の議員で有力候補の1人と目される彼が大統領になれば、女性も徴兵される可能性が出てきた。

男女平等の主張を多くの韓国人男性が支持

 現在の韓国では、すべての男性国民に兵役の義務がある。満18歳になると徴兵検査を受けて、心身ともに問題なしとなれば原則20~28歳の間に軍隊に入隊せねばならない。兵役期間は陸軍と海兵隊が18か月、海軍20か月、空軍21か月。また、兵役を終えた除隊後も8年間は予備役に編入され、1年に1度の軍事訓練に参加する義務がある。

 1年以上も厳しい訓練に従事し、また、社会から隔離された禁欲生活を強いられる。その上、軍隊内では先輩兵士の壮絶なイジメもあるというから若者たちにとっては地獄の日々。兵役のことを考えると憂鬱(ゆううつ)になる者は多いという。

 国民にとって最も辛い兵役の義務を、「男女が平等に分かちあうべきだ」というのが、朴候補は主張。新たに導入する男女平等服務制度が導入されたら男女ともに最大100日の基礎軍事訓練を受けることになる。兵役期間が大幅に短縮される男性にとっては喜ばしい話だ。

 今年になってから、大統領府のウェッブサイトに、「女性も徴兵対象に含めてください」という請願が行われ、これに29万人もの賛同が集まった。韓国の男性たちが兵役の義務を不平等だと考える現れだろう。

韓国軍はジェンダーレス化に対応できるか?

韓国軍はジェンダーレス化に対応できるか?

7月2日、30歳未満の将兵30.3%が2回目の接種完了と報じる 出典 聯合ニュース

韓国軍はジェンダーレス化に対応できるか?

 しかし、これまで兵役の義務がなかった女性たちはどう考えるか。例え3か月程度の短期間とはいえ、自由を奪われるのは嬉しい話ではない。兵役の男女平等を訴える朴候補の主張は、はたして大統領レースにプラスになるかマイナスに働くのか。判断は難しい。

 韓国軍ではこれまでも、志願兵として女性を採用していた。近年は女性の採用に積極的になっており、2016年には全軍で女性兵士が1万人を突破して増え続けているという。しかし、韓国軍62万人と言われる大量の兵士がいるだけに割合にすればわずか1.6%と、各国の軍隊と比較すればまだまだ少ない。

 ちなみに、日本の陸海空自衛隊では、女性自衛官の数は約1万7000人を数え、全体の7.4%になる。また、米軍では現役兵士の15.6%が女性で占められている。他にも欧米では女性兵士の割合が10%以上に達している国が大半。軍隊のジェンダーレス化は世界的な流れだ。韓国としてもこれに取り残されるわけにはいかない。しかし、女性の兵役が導入されると、その数は一気に何十倍にも増えることになる。それを受け入れるためには、兵営内の設備を大規模改修せねばならず、ただでさえ予算不足で悩む韓国軍にとっては頭の痛い問題である。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)などがある。

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