組織化されたハッカー部隊(2/2)

組織化されたハッカー部隊(2/2)

平壌の科学技術殿堂でパソコン学習する子供

北朝鮮 ハッカーの実像 サイバー空間で外貨を稼ぐ新たな戦士たち1の続き。

 1991年の湾岸戦争によって電子戦の重要性を認識し、総参謀部直属として指揮自動化局を置き、各軍団に電子戦の研究所を創設した。1995年には、中央党35号室に基礎資料調査室を設置、海外の国家機関、団体、個人の機密資料の収集を始めた。

 1998年には121所(現在は121局)と呼ばれるサイバー部隊を発足させた(参考2)。
 
 北朝鮮のハッカー組織は121局のほか、ハッキングのプログラムを作る「31所」、軍などのサイバー攻撃を担当する「110号研究所」、社会の混乱を狙う「31所」「32所」などがある(参考3)。

「万能の宝剣」は400人?

「万能の宝剣」は400人?

5点満点中4.5で素晴らしいと評価される瀋陽の元七宝山ホテル 出典 Ctrip(携程旅行)

「万能の宝剣」は400人?

 北朝鮮のハッカーは実態がわからないだけに、過剰に評価されている面もあるようだ。最近、韓国の有力紙・東亜日報の周成河(チュ・ソンハ)記者が解説記事を書き、自身のユーチューブでも詳しく紹介していた。

 周は北朝鮮出身。海外に駐在する北朝鮮のIT技術者と交流があり、実状を聞いたという。この部分は、私の近著『金正恩が表舞台から消える日 北朝鮮 水面下の権力闘争』(平凡社新書)でも紹介している。


 それによれば、北朝鮮でのスタートは党所属対南工作部門の作戦部が、韓国軍と在韓米軍の軍事情報を取得するため、旧ソ連の暗号解読専門家たちを秘密裏に招き、技術を磨いたことだった。

 さらに正恩氏が2013年頃、偵察総局に対し、「サーバーは核・ミサイルと並び、軍隊による無慈悲な打撃能力を担保する万能の宝剣だ」と指示を出し、サイバー能力の強化を指示した。

 これを受け、平壌にある金星第1中学と、金星第2中学にコンピュータ秀才班が設けられた。卒業生は大学でも専門教育を受ける。すでに、技術が高くカネが稼げるハッカーは400人を越えているという。

 また、韓国の大手企業サムスンの支援を受け、インドで専門教育を受けた人もおり、高度な技術を持っている。インドネシアやブルガリアを舞台にハッキングを行っていたという。現在は国連制裁を逃れ、中国で主に活動しているとされる。

 中国では、吉林省瀋陽にあった北朝鮮と中国の合弁ホテル、七宝山ホテルにハッカー基地があった。現在、このホテルは中国資本のホテルとして衣替えしており、基地も撤去されたとみられる。

1日平均158万回のサイバー攻撃

 韓国の情報機関・国家情報院は4月に行われた国会情報委員会で、北朝鮮が韓国の政府機関や企業などに仕掛けた最近のサイバー攻撃は1日平均で約158万回と報告している。とてつもない回数だ。国の運命をかけて攻撃を仕掛けていることが伝わってくる。

 最近は、海外の製薬会社のコロナワクチン情報を狙うこともある。今年5月には北朝鮮が、韓国原子力研究院を狙ったサイバー攻撃を仕掛けていたことが判明しており、国際社会も警戒を強めている。

参考サイト(韓国語)
2.https://m.etnews.com/20210705000207
3.https://www.yna.co.kr/view/GYH20160219001300044

五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)、『新型コロナ感染爆発と隠された中国の罪』(宝島社、2020年・高橋洋一らと共著)、近著『金正恩が表舞台から消える日: 北朝鮮 水面下の権力闘争』(平凡社、2021年)。
@speed011

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