公開処刑された北朝鮮の最高美人はどんな顔立ちだったのか韓国人も注目

公開処刑された北朝鮮の最高美人はどんな顔立ちだったのか韓国人も注目

禹仁姫(ウ・インヒ)を紹介するチュ・ソンハ記者のユーチューブチャンネル(掲載許可済み)

 韓国で脱北者の「ユーチューブ」が視聴者を獲得している話をこのサイトで書いたが、そこで紹介した東亜日報記者のチュ・ソンハ氏の番組が、興味深い写真を公開した。

 北朝鮮では悲運の女優と呼ばれる、禹仁姫(ウ・インヒ)のものだ。彼女は1960年から70年代、最高の美人と称され、北朝鮮で知らない人はいないほどの人気ぶりだった。

 彼女のことについて私は、『女が動かす北朝鮮』という文春新書で紹介したことがある。
その記述を一部引用しよう。

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 禹仁姫を直接見たことがある人々は、「遠くから歩いてくる彼女の姿は一羽の白鳥と同じだった」と話す。

 北朝鮮初の恋愛映画「木蓮の花」三部作でヒロインを熱演。朝鮮半島の古典文学を映画化した「春香伝」の主人公、春香役に抜擢され、名声を確立した。

 彼女は映画撮影時、撮り直しがないほど演技に卓越した才能を見せた。多くの映画関係者らは禹仁姫の演技力を認めた。

 北朝鮮に一時拉致された韓国の女優、崔銀姫は「彼女は結婚していたがしばしばスキャンダルを起こした。見方によっては男たちの誘惑に乗りやすい身持ちの悪い女であり、別の見方からすれば、自分なりの人生を楽しむことを知っていた女性であった」と著書の『闇からの谺』に書いている。

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 そんな彼女は、1980年の冬、男性と車の中から発見された。男性はすでに死亡していた。男は在日商工人の息子で、金持ちだったが妻がいた。

 「重大な不倫」事件として、金正日総書記の特別指示で公開処刑された。

 このストーリーを紹介したチュ記者のもとに、日本から相次いで「禹仁姫の写真がある」と連絡が来たという。

 北朝鮮ではすでに写真はおろか、名前も消し去られ、韓国にも十分な資料はない。日本では彼女の最盛期に作成された映画や公演のパンフレット、彼女が出演した映画に関する本が出版されており、保存されていたのだった。

 朝鮮半島には元々「南男北女」という言葉がある。南には美男子が多く、北には美女が多いということだ。その北朝鮮の最高美人はどんな顔立ちだったのか、チュ記者のチャンネルの視聴者も関心があったようで、100万人以上が禹仁姫に関する番組を視聴したという。

日本に残されていたウ・インヒ

日本に残されていたウ・インヒ

『闇からの谺』文庫版より

日本に残されていたウ・インヒ

 計6枚が番組で公開された。うち2枚は、韓国でもベストセラーになった『闇からの谺』の文庫版(文藝春秋)に掲載されていた。単行本にはなかったので、文庫になる過程で、編集者がどこかから探してきたのだろう。

  • 『闇からの谺』文庫版より

ヤフオク!で即決3万円にて出品中

ヤフオク!で即決3万円にて出品中

当時の在日本朝鮮人總聯合中央映画が提供元となっている「春香伝」の宣伝パンフレット

ヤフオク!で即決3万円にて出品中

 もう1枚は、映画「春香伝」の宣伝パンフレットだ。チマチョゴリを着ている女性が、主演の禹仁姫で、「主演 禹仁姫」と書かれている。

 このパンフレットは、日本の「ヤフオク!」(ヤフーオークション)に出品されており、なんと3万円の値段が付いている。

 「在日朝鮮人総聯合会」つまり、朝鮮総聯が写真を提供しているのが興味深い。この映画を日本でも上映し、政治宣伝に使っていたのだろう。

  • 春香伝のあらすじや配役

 2012年に出版された『朝鮮民主主義人民共和国映画史 建国から現在までの全記録』(門間貴志著、現代書館)という本の中にも、禹仁姫の大きな写真が掲載されている。「ある分隊長の物語」という映画の一場面だ。

  • 『朝鮮民主主義人民共和国映画史 建国から現在までの全記録』よりウ・インヒ

まだまだ日本に知られざるウ・インヒが眠っているかもしれない

まだまだ日本に知られざるウ・インヒが眠っているかもしれない

 処刑場の様子を、ふたたび私の著書から引用しよう。

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 何が行われるか説明がないまま市民たちがバスで山中に連れて行かれた。しばらく待っていると、遠くからジープが1台走ってきた。禹仁姫が車内から引きずりだされた。
 
 簡単な裁判が行われ、社会安全部(現・人民保安部)所属で小銃を持った死刑執行人が禹仁姫に向かって、銃を発射した。その様子を彼女の娘と夫が見守っていた。

 立ち会っていた人が、脱北後、韓国で書いた本によれば「6発の銃弾を浴びながらも、禹仁姫はすぐには倒れなかった。血しぶきが白いテントに跳ねて、鮮明な絵を描いたが、まだ彼女は地に倒れなかった。すると、責任者が禹仁姫に近寄り、頭に拳銃を押し当て、また3発発射した」(『私は金正日の「踊り子」だった』申英姫著)。

 禹仁姫の銃殺については厳重な緘口令が敷かれ、公開処刑に動員された人たちに対して、目擊したことを他人に漏らしたら同様の罪で処罰するという命令が下された。

 そして、全ての雑誌、出版物から彼女の顔写真が切り取られた。彼女が出演した映画は、別の女優を使って撮り直された。
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 北朝鮮の暗い歴史を物語るエピソードだ。写真だけでなく、彼女の映画や発言に関する資料も、日本のどこかに眠っているのではあるまいか。

※トップと最後の画像はチュ・ソンハ記者のユーチューブより。本人の許諾を受けています。

五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)、近著『新型コロナ感染爆発と隠された中国の罪』(宝島社、2020年・高橋洋一らと共著)など。

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