コロナ禍に脚光を浴びるサイバー戦士たち(1/2)

コロナ禍に脚光を浴びるサイバー戦士たち(1/2)

脚光を浴びる北朝鮮のサイバー戦士たち

 新型コロナウイルスを防ぐため、国境封鎖を1年半続けている北朝鮮は、文字通り四面楚歌に陥っている。食糧不足も深刻化しているようだ。そんな中、脚光を浴びているのが、北朝鮮のサイバー戦士たち。キーボード1つで、世界から外貨を稼ぎ出す彼らの実態を探った。

サイバー戦士の稼ぎで核・ミサイル開発

 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の下に置かれた専門家パネルは、毎年報告書をまとめている。

 最新の年次報告書によれば、北朝鮮は2020年も核・弾道ミサイル開発を継続し、国連制裁に違反した。そのほか、サイバー攻撃で不正に得た資金を核・ミサイル開発に活用したという。

 この報告書には具体的な数字もある。

 北朝鮮が2019年から20年11月までに盗んだ仮想通貨(暗号資産)の評価額は約3億1640万ドルだった。制裁前、北朝鮮の外貨収入は年間数10億円規模だった。

 北朝鮮はかつて偽札や偽たばこの製造で外貨を稼いでいた。ハッカーは、足がつきにくく外貨を稼ぎ出す頼もしい「戦士」だろう。

 新しい時代の戦士である彼らはどう育成され、どう資金を奪っているのか。

 それをうかがわせる発表を米司法省が2021年3月に行った。同省は、米国内外の企業や銀行へのサイバー攻撃によって13億ドル(約1400億円)を不正に取得した疑いで、北朝鮮のハッカー3人を起訴したと発表、名前や顔写真を公開した

 3人は朝鮮人民軍の情報機関「偵察総局」に所属する20~30歳代の3人だ。

 悪性コードをメールで送りつける手法で、現金や暗号資産を奪い取った。15年から19年にかけてベトナムやバングラデシュなどの銀行のシステムに侵入したりして現金を盗んだ。

 彼らが所属するのは「ラザルス」と呼ばれ、ソニーピクチャーズへのサイバー攻撃にも関与していた。

 17年にはコンピューターウイルス「ランサムウエア」を作成。情報を抜き取った企業に「身代金」を要求した。インドネシアなどの企業にも攻撃を仕掛け、仮想通貨を盗み取ったという。

きっかけは湾岸戦争。韓国はハッカー6800人と推定

 北朝鮮のハッキング部隊の力については、世界有数という評価もある。韓国国防省は「2020国防白書」で、その数を6800人と推定している。ハッキングの専門組織は7つあり、1700人が所属。支援組織も17つあり、5100人いるとの分析だ(参考1)。北朝鮮専門サイト、デイリーNKは、ハッカーの人数は、2万3000人に増やされたと報道している。 

 北朝鮮がハッカーを養成し始めたのは1986年からだという。「軍指揮自動化大学」(2000年、金一軍事大字に名称変更)を設立し、コンピュータの専門要員100人を養成した。

北朝鮮 ハッカーの実像 サイバー空間で外貨を稼ぐ新たな戦士たち2へ続く。

参考サイト(韓国語)
1.https://www.yna.co.kr/view/MYH20210218017300038

五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)、『新型コロナ感染爆発と隠された中国の罪』(宝島社、2020年・高橋洋一らと共著)、近著『金正恩が表舞台から消える日: 北朝鮮 水面下の権力闘争』(平凡社、2021年)。
@speed011

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