きっかけは日本人同僚

きっかけは日本人同僚

スターリン様式の駅舎を持つ平壌駅

 中国・吉林省出身の朴太龍さんは、大連の米系企業に勤務していた2013年に休暇を利用して北朝鮮への団体旅行へ参加した。

 朴さんは朝鮮族で、親戚が現在の北朝鮮にいるが直接連絡を取っていないこともあり、それまであまり北朝鮮との接点も関心もなかった。その朴さんが、北朝鮮旅行へ参加しようと思ったのは、同僚だった日本人が北朝鮮に興味があり、彼の話を聞いているうちに自身のルーツを考えるようになり、一度、北朝鮮へ行ってみたいと思うようになったという。

 一般的な中国人は、日本人のように1人だけで旅行することはできない。グループ旅行が主流となる(その代わり旅費は安く、入国審査期間も短い)。

 朴さんが参加したツアーは30人ほどのグループで、旅行日程は平壌、開城・板門店観光の鉄板コース。30人の中、朝鮮族は朴さん1人だったそうだ。

平壌駅近くのローカル食堂へ潜入

 朴さんらは平壌で2か所のホテルに宿泊したが、その1か所は高麗ホテルだった。夕食が終わってホテル内で自由時間となった時、朴さんはそのままホテルの外へ出てみた。5分ほど歩くと平壌駅へ到着。朴さんは、普通の平壌市民が食事や酒を飲んでいる姿を見たいと、駅前で人民元を朝鮮ウォンへ両替し、「近くにお酒が飲める食堂はありますか?」とすれ違う人に尋ね、現地時間の午後7時過ぎに駅近くのローカル食堂へ入った。

 この食堂は、中国人も含めていわゆる外国人観光客が訪れないような店だった。朴さんは着席し、店員に店の人気料理を聞き注文して食べていた。特別に美味しいわけではないが、庶民的な雰囲気がよかった。

全員に酒をおごる

 朴さんが1人で来店したことを不思議に思ったのか、居合わせた他の客が「どこから来たのか?」と聞いてきたので、中国の朝鮮族で、観光で平壌へ来たと答えたところ、一瞬、顔色が変わり身構えたのがわかった。しかし、朝鮮語で普通に会話ができるので、すぐに警戒心も解けて、自身のルーツの話で盛り上がった。

 気を良くした朴さんは、「ここにいる全員にお酒をごちそうします」と言ってしまい店内の10数人と乾杯を交わして2時間ほど楽しんだ。

 朴さんが店内にいた10数人分の酒をおごってかかった金額は100元(約1700円)くらいだったそうだ。また、持っていた人民元紙幣を見せたら、初めて外国の紙幣を見たと珍しがっていたのが強く印象に残っているという。

 朴さんは、店を後にして何事もなかったかのように高麗ホテルへ戻った。この食堂の体験が旅一番の思い出だと話す。

 中国の北朝鮮旅行の代理店へこの話をすると、「トラブルの元なので絶対に止めてください…」と釘を刺された。例え、言葉ができるとしても、北朝鮮での外国人観光客の独り歩きは事実上禁止されているので、止めたほうが良いとのことだ。

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