党中央軍事委開催。今後の兵器開発を意識した幹部人事か

党中央軍事委開催。今後の兵器開発を意識した幹部人事か

党中央軍事委拡大会議に出席した金正恩委員長(提供「コリアメディア」)

 北朝鮮国営メディアは5月24日、金正恩委員長出席の下で党中央軍事委員会第7期第4回拡大会議を開催したと報じた(開催日は不明)。

 報道によると、会議では「敵対勢力の持続的な大小の軍事的脅迫をけん制できる」ために、「重要な軍事的対策と組織政治的対策が研究、討議された」とのことである。

 幹部人事では、李炳哲(リ・ビョンチョル)党中央委副委員長と、朴正天(パク・チョンチョン)軍総参謀長がそれぞれ昇格を果たしたことが注目される。

 李炳哲党副委員長はこれまで核・ミサイル開発を統括する軍需工業部で第1副部長などを歴任してきたが、今回、党中央軍事委員会の副委員長に選出された(軍事委委員長は金正恩党委員長が務める)。

 この副委員長ポストは、かつて党序列第3位であった黄炳瑞(ファン・ビョンソ)氏が務めていた。同人が解任されて以降は副委員長ポストが廃止されていたが、今回の選出で復活した形である。李炳哲党副委員長が黄炳瑞氏と同水準の序列に上がる可能性がある。

 次に、朴正天軍総参謀長(党軍需工業部長)は朝鮮人民軍大将から次帥に昇格した(元帥は金正恩委員長が務める)。軍首脳部としては他に金正官人民武力相(大将)、金秀吉総政治局長(大将)が並び立つ中で唯一の次帥となった。

 核・ミサイルの開発を担う両名の重用は今後の軍事力強化を見据えたものと考えられ、今後の動向が注目される。

北朝鮮が「核戦争抑止力」の強化を発表

 今回の会議で特に注目されるのは、「核戦争抑止力を一層強化して戦略武力を高度の激動状態で運用するための新たな方針」が提示されたという点である。

 激動状態とは、「核兵器の即時発射が可能な状態」を意味していると解釈できる。要するに、核弾頭と運搬手段(ミサイル)を分離せず、常に発射状態にあるということだ。

 類似の概念として思い出されるのは、米ソ冷戦下の「警報即発射」(Launch On Warning)態勢である。これは、敵が核攻撃の実施を決定また着手した際、その前に敵に対して核攻撃を行うというものであり、当時米ソ両国は、多くの核弾頭を「警戒態勢」(即時発射可能な体制)に置いていたとされる。

 冷戦終結後は警戒態勢下の兵器削減が進められてきたものの、現在でもその数はゼロとなっていない。

 「米国科学者連盟(FAS)」は報告書(2017年4月)の中で、2017年時点において警戒態勢下に置かれている核弾頭の推計値として、米国852個(4000個保有中)、ロシア897個(4300個中)、フランス80個(300個中)、イギリス40個(215個中)と発表している。

 ちなみに、その他の核保有国である北朝鮮、中国、パキスタン、インド、イスラエルは警戒態勢下にある核弾頭は0個と推定している。

 今回の北朝鮮の示唆した激動状態とは、この警戒態勢と同様の概念と考えてよいだろう。

 もちろん米露仏英も警戒態勢下の核弾頭を削減していくべきであるが、北朝鮮もこれらと同様の軍備を行うとすればゆゆしき事態である。
 

北朝鮮はなぜ「核抑止力強化」を進めるのか?背景にあるのは日米韓の動向

北朝鮮はなぜ「核抑止力強化」を進めるのか?背景にあるのは日米韓の動向

命令書に署名する金正恩委員長(提供「コリアメディア」)

 ではなぜ北朝鮮がこの状況において核抑止強化を必要としたかである。

 大統領選を11月に控えるアメリカをけん制したものと考えられるが、果たしてそれだけだろうか。

 冒頭でも記した通り、今回の軍事委員会の目的の1つは「敵対勢力の持続的な大小の軍事的脅迫をけん制」することにあり、核抑止力強化もこの文脈で考えるべきである。

 その場合、敵国とは米国以外にはどこの国を指しており、どのような軍事的脅迫を意味しているのだろうか

 まず考えられるのは韓国である。

 国営メディア『労働新聞』などは5月8日、韓国の軍事演習を非難する人民武力省談話を伝えている。同談話は5月6日に韓国が朝鮮半島西側の黄海上で軍事演習を行ったことについて、「絶対に見過ごせない挑発で、必要な対応をしなければならない」と非難。

 さらに、「最近の軍事演習は、敵(韓国)は常に敵であり続けるという明白な事実に再び目覚める機会となった」、「2018年の北南首脳会談以前の出発点に全ては戻りつつある」と指摘している。

自衛隊の防衛態勢強化に警戒示す。米核実験再開の動きも

 次に、日本である。

 国営メディア「朝鮮中央通信」は5月20日、自衛隊が昨今、宮古島などで中国や北朝鮮を念頭に置いた離島防衛態勢強化が進められていることや、米国からオスプレイを導入したこと、「宇宙作戦隊」を創設しようとしていることを非難した。

 これらの日本の動きを「軍国主義に取りつかれた侍の子孫が再び戦争を起こすのは時間の問題」と断じている。

 このように、北朝鮮は日韓の動きを警戒している。日韓は米国の従属下にあると捉える北朝鮮からすれば、一連の動きを軍事的脅迫と捉えている可能性がある。

 日米韓の軍事関連の動きは北朝鮮の軍事的警戒意識につながるのである。

 ところで、米『ワシントンポスト』が5月22日、「トランプ政権が(1992年以来行われていない)爆発を伴う核実験の実施を検討した」旨を伝えている。

 アメリカの核実験示唆の動きが北朝鮮を意識したものかは定かではない。しかし、核実験を行えば北朝鮮を警戒させるだけでなく、北朝鮮としても「米国が核実験を行っているのに非難される覚えはない」と実験実施に向けて大義名分を与えることにもなるだろう。

八島 有佑

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