ちなみに、その他の核保有国である北朝鮮、中国、パキスタン、インド、イスラエルは警戒態勢下にある核弾頭は0個と推定している。

 今回の北朝鮮の示唆した激動状態とは、この警戒態勢と同様の概念と考えてよいだろう。

 もちろん米露仏英も警戒態勢下の核弾頭を削減していくべきであるが、北朝鮮もこれらと同様の軍備を行うとすればゆゆしき事態である。
 

北朝鮮はなぜ「核抑止力強化」を進めるのか?背景にあるのは日米韓の動向

北朝鮮はなぜ「核抑止力強化」を進めるのか?背景にあるのは日米韓の動向

命令書に署名する金正恩委員長(提供「コリアメディア」)

 ではなぜ北朝鮮がこの状況において核抑止強化を必要としたかである。

 大統領選を11月に控えるアメリカをけん制したものと考えられるが、果たしてそれだけだろうか。

 冒頭でも記した通り、今回の軍事委員会の目的の1つは「敵対勢力の持続的な大小の軍事的脅迫をけん制」することにあり、核抑止力強化もこの文脈で考えるべきである。

 その場合、敵国とは米国以外にはどこの国を指しており、どのような軍事的脅迫を意味しているのだろうか

 まず考えられるのは韓国である。

 国営メディア『労働新聞』などは5月8日、韓国の軍事演習を非難する人民武力省談話を伝えている。同談話は5月6日に韓国が朝鮮半島西側の黄海上で軍事演習を行ったことについて、「絶対に見過ごせない挑発で、必要な対応をしなければならない」と非難。

 さらに、「最近の軍事演習は、敵(韓国)は常に敵であり続けるという明白な事実に再び目覚める機会となった」、「2018年の北南首脳会談以前の出発点に全ては戻りつつある」と指摘している。

自衛隊の防衛態勢強化に警戒示す。米核実験再開の動きも

 次に、日本である。

 国営メディア「朝鮮中央通信」は5月20日、自衛隊が昨今、宮古島などで中国や北朝鮮を念頭に置いた離島防衛態勢強化が進められていることや、米国からオスプレイを導入したこと、「宇宙作戦隊」を創設しようとしていることを非難した。

 これらの日本の動きを「軍国主義に取りつかれた侍の子孫が再び戦争を起こすのは時間の問題」と断じている。

 このように、北朝鮮は日韓の動きを警戒している。日韓は米国の従属下にあると捉える北朝鮮からすれば、一連の動きを軍事的脅迫と捉えている可能性がある。

 日米韓の軍事関連の動きは北朝鮮の軍事的警戒意識につながるのである。

 ところで、米『ワシントンポスト』が5月22日、「トランプ政権が(1992年以来行われていない)爆発を伴う核実験の実施を検討した」旨を伝えている。

 アメリカの核実験示唆の動きが北朝鮮を意識したものかは定かではない。しかし、核実験を行えば北朝鮮を警戒させるだけでなく、北朝鮮としても「米国が核実験を行っているのに非難される覚えはない」と実験実施に向けて大義名分を与えることにもなるだろう。

八島 有佑

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