金正恩氏が書簡で「社会主義強国建設」計画明かす

金正恩氏が書簡で「社会主義強国建設」計画明かす

北朝鮮黄海北道で建設中の養鶏場を視察する金正恩党委員長(当時)。2020年7月23日付の労働新聞より(提供 コリアメディア)

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記が「今後15年以内に全人民が幸福を享受する隆盛繁栄の社会主義強国を打ち建てるつもりである」という決意を表明した。

 4月27日から29日まで開催されていた「金日成・金正日主義青年同盟」第10回大会に際して金正恩氏が送った書簡に記された言葉である。党機関紙・労働新聞が30日に伝えている。

 青年同盟は党外郭団体で、朝鮮職業総同盟、朝鮮社会主義女性同盟、朝鮮農業勤労者同盟と並ぶ4大勤労団体の1つ。今回の大会で青年同盟の名称が「社会主義愛国青年同盟」に改称されている。党員を除く14~30歳の全人民に加入義務がある。

 金正恩氏はその青年同盟に対して、反社会主義的な行為を警戒しつつ、各人が社会主義建設のために役割を果たすよう求めた。

 2016年5月の第7回党大会などでたびたび出てくる「社会主義強国建設」という言葉だが、今後さらに重要なキーワードとなりそうだ。

北朝鮮が求める強国は「人民の幸せ」

 では金正恩氏が書簡で伝えた「社会主義強国」とはどのようなものを言うのだろうか。その答えは5月7日付の労働新聞が「強国評価の基準」と題した論評で示している。

 論評は、「国によって強国の定義は異なる」とした上で、北朝鮮が求める強国とは「人民が無病息災で、平穏で睦まじく暮らしていく社会」であると定義した。

 北朝鮮の国力を測る尺度は「人民の笑みと人民の幸せ」だとしており、このような理想社会を建設するために闘うのが朝鮮労働党員や朝鮮革命家であると述べている。

 加えて、「国の科学技術や国家防衛力をどれほど強化させても人民の生活に資するものでなければ強国とは言えない」と指摘しており、人民の生活向上こそが必要と強調している。いわば経済建設や核開発は自主権確保などの手段であり、それ自体が目的ではないということだ。

 金正恩氏は以前から「人民第1主義」をモットーに掲げており、その姿勢を改めて示した形だ。

指導者就任当時から「人民生活向上」を掲げてきた金正恩総書記

 今年1月の第8回党大会でも「人民大衆第1主義」が強調されたことが注目されたが、実は金正恩氏は指導者就任当時から人民生活向上について言及してきた。

 2012年4月15日の故金日成(キム・イルソン)主席生誕100周年を記念した軍事パレードで、就任したばかりの金正恩氏が公の場で初めて演説した(当時の肩書きは第1書記)。

 その演説で、金正恩氏は「人民に社会主義栄華を存分に享受しようというのが私たちの党の確固たる決意」と表明し、すでに人民生活向上への意欲が語られているのだ。

 演説の柱は国防力強化の重要性を強調し、軍重視の「先軍政治」継承方針を示すものだったが、人民の生活に言及があったことに当時注目が寄せられた。

 その後、金正恩氏は大会や会議などで「人民生活向上」という言葉を繰り返し使用しており、毎年元日に発表する新年辞でも欠かさず言及している。
 

強国化に向けた15年のロードマップに注目

強国化に向けた15年のロードマップに注目

2012年4月15日、金正恩第1書記(当時)が公の場で初めて演説(提供 コリアメディア) 

 今回、15年以内に社会主義強国化を表明した金正恩氏。つまりは15年以内に人民の生活水準を目標まで引き上げることを宣言した形となった。

 気になるのは15年と単なる努力表明としては期間が長いことである。

 書簡の送り先が青年同盟なので、現在14~30歳の彼ら彼女らが30、40代になるまでにはという意味合いがあるのかもしれないが、どこか具体的な計画を感じさせる数字である。

 さすがに15年経済発展計画なる長期計画は発表されないだろうが、15年という単位にどのような根拠があるのか、また目標達成のためにどのようなロードマップを描いているのか今後の発表に注目したい。

八島 有佑

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