金日成回顧録を販売中止に追い込んだ韓国政府を非難

金日成回顧録を販売中止に追い込んだ韓国政府を非難

平壌・万寿台の金日成像(左)と金正日像(右)

 北朝鮮メディアが、韓国で故金日成(キム・イルソン)主席の回顧録『世紀とともに』の出版が問題視されていることを非難する論評を相次いで掲載した。

 回顧録は出版社「民族サランバン」が4月1日に発刊したが、物議を醸して約3週間で販売中止となった。韓国統一部は、同社が北朝鮮の図書を出版目的で国内に持ち込むために必要な承認を得ていなかったことを問題視している。

 この騒動を受け、北朝鮮の対外宣伝サイト・メアリは5月3日、「出版の自由がない『自由民主主義』」と題する記事を出し、「南朝鮮にどれだけの自由と民主主義があるのか」と疑問を投げかけたのである。

 論評では、韓国側の動きを「新たな圧力の波」と表現し、「人々が享受すべき自由の中でも基本となる言論の自由と出版の自由を奪った」と韓国当局の対応を非難した。

北朝鮮メディア「金日成回顧録は必読書」

 同じく3日、祖国統一委員会公式サイト・わが民族同士(朝鮮語版)も金日成回顧録をめぐり論評を掲載した。

 論評では、今回、韓国の出版社が「南北和解の契機」になることを期待して回顧録を出版したのであり、販売収益は「朝鮮統一運動資金」に使うことを約束していたと紹介。出版社の行動は「万人の賛辞を受けるべく正当なこと」と絶賛した。それにもかかわらず、韓国当局が手続き上の不備を理由に出版社を調査し、「出版と普及を阻むべく卑劣に策動している」と非難しているのだ。

 その上で論評は、そもそも金日成回顧録が韓国で普及していないことを疑問視。回顧録を「政治的意見や信仰にかかわらず誰もが読むべき必読書」「人類に真の人生の指針を明らかにする大百科全書」と位置づけ、これまで韓国で出版されていなかったこと自体が「大きな民族的羞恥」と非難した。

金日成回顧録=南北共通の必読書という認識

 このように北朝鮮は韓国の北朝鮮出版物禁止を非難しているが、よく知られている通り北朝鮮も韓国製品の流入を禁止している。韓国の人気ドラマ「愛の不時着」の中で韓国ドラマを隠れて視聴している人民の姿があったが、それが発覚すれば罪に問われる。

 そのことを考えれば、「北朝鮮の今回の韓国非難はそのまま自分に返ってくるのではないか」という指摘もできるが、今回、北朝鮮は「金日成回顧録は南北分断をこえて読むべきもの」という認識を示したとも考えらえれる。

 なぜなら、回顧録は金日成主席の抗日闘争の軌跡が記されているからだ。つまり、「同じ日帝支配を受けた朝鮮民族なのだから、南北が分断されていても金日成主席の抗日闘争の記録は読むべき歴史書」という論理と捉えることができる。そういう意味で回顧録を「必読書」と定義したのではないだろうか。

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