韓国政府「フランシスコ教皇が訪朝を承諾」と発表

韓国政府「フランシスコ教皇が訪朝を承諾」と発表

文在寅大統領から訪朝要請を受けたフランシスコ教皇

 停滞する南北・米朝対話を促進するため、韓国政府内で「ローマ教皇訪朝」への期待が高まっている。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10月29日、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇と会談した際、フランシスコ教皇に北朝鮮訪問を提案。フランシスコ教皇は「招待状を送ってくれれば平和のために喜んで(北朝鮮へ)行く」と承諾したと韓国政府は発表している。

 その後、韓国統一部(省)は「北朝鮮が決断すれば、教皇訪朝の可能性がある」(11月4日)と北朝鮮側に呼びかけるなど、教皇の訪朝実現に意欲的な姿勢を示す。

 「平和のシンボル」である教皇の初訪朝を実現させることで、対話促進をはかりたい考えだ。

2018年にも訪朝要請も実現せず

 文在寅大統領が、ローマ教皇に訪朝を要請するのは今回が初めてではない。2018年10月にバチカンを訪問した際も、フランシスコ教皇に訪朝を依頼していた。

 文在寅大統領は、「金正恩(キム・ジョンウン)委員長は、フランシスコ教皇が平壌を訪問するなら歓迎すると言っていた」と北朝鮮訪問を促した。この時もフランシスコ教皇は、「招待があれば訪問できる」と訪朝を承諾したと韓国政府は発表している。

 だが、2019年2月に米朝ハノイ会談が物別れに終わったことも影響したのか、金正恩総書記からフランシスコ教皇に招待状が送付されることは、なかったようだ。今日まで教皇による訪朝は実現していない。

 そのような中、文在寅大統領は、2度目となる訪朝要請を行なったのである。

教皇庁は教皇訪朝について発表なし

 ただ、韓国政府は「教皇に訪朝の意思がある」と強調したが、一方のローマ教皇庁は公式発表(10月29日)では教皇訪朝について直接言及していない。

 教皇庁の発表では、「友好的な両国関係とカトリック教会が、社会に提供する積極的な貢献について謝意を表わし、朝鮮半島の南北間の対話と和解促進のために格別な努力を傾けたという点に注目した。連帯と友愛のもと、朝鮮半島の平和と発展のための共同の努力と善意を共に分かち合うことに期待した」となっている。

 これは韓国語版の発表文を和訳したものだが、英語版などでも同旨。フランシスコ教皇が積極的に訪朝を希望しているとは記されていない。

 さすがに、カトリック教徒でもある文在寅大統領が、フランシスコ教皇の発言をねつ造、または、拡大解釈して発表することはないだろう。

 2018年の要請時もそうだが、教皇庁は訪朝の可能性自体は、否定しないものの、「北朝鮮から公式に招待されれば、教皇の訪朝にどのような条件が必要か検討する」という立場である。

 教皇による訪朝の重大性や影響の大きさを踏まえれば、教皇庁としては慎重になるのは当然だ。正式発表がないだけでは、教皇庁の真意ははかれない。

対話促進のためにローマ教皇の訪朝に期待

 韓国政府の発表通りなら、実際に北朝鮮から招待状が届いた場合、ローマ教皇庁側は、訪朝に向けて前向きに検討すると考えられる。

 とは言え、肝心の北朝鮮が招待状を送らないと何も始まらないため、韓国政府としては、北朝鮮に招待状を送るよう促すしかない。

 文在寅大統領としては、残りの任期で南北対話、米朝交渉を発展させるため、また、朝鮮戦争の終戦宣言に向けて協議を行うため、平和の象徴である教皇の訪朝に期待を寄せていると見受けられる。

 なお、米朝間で橋渡しを行なっている韓国が、米国の意向を無視して教皇訪朝を呼びかけることはありえないため、米国としてもフランシスコ教皇の訪朝におおむね同意しているとみられる。

八島 有佑
@yashiima

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