OECD4番目となる貧困率16.7%

OECD4番目となる貧困率16.7%

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 近年の韓国では、相対貧困率に注目が集まっているという。

 相対貧困率とは、世帯の所得を世帯人数で割って算出した数字から、貧困線(中央値)よりも下にある世帯の割合のこと。貧困線より下にある世帯は、その国の文化水準や生活水準と比較して困窮状態にあるとみなされ、収入格差の実態を表す1つの指標にもなる。

 今年10月25日にOECD(経済協力開発機構)が発表した2018-2019年の基準では、韓国の相対貧困率は16.7%とコスタリカ、米国、イスラエルに次いで加盟37か国中4番目という高い数値を示していた。

 野党などがこれを貧困層の急増ととらえて、政権批判も激しくなっているという。

高齢者の相対的貧困率48.6%。54%が無年金

 韓国の相対貧困率が急上昇した要因は、主に高齢化にあると言われる。

 65歳以上の高齢者世帯の相対貧困率は48.6%とその他の世代に比べて際立って多く、2人に1人が貧困状態にあるということだ。

 仕事をリタイアした高齢者は、土地や株などの資産がない限り年金に頼るしかない。が、高齢者の54%が無年金なのだという。

 韓国で国民年金制度ができたのは1988年だが、制度が完成して国民全員が加入できるようになったのは1999年のこと。年金は40年加入して満額支給となるのだが、その歴史の浅さゆえに満額受給を受けられない者が多いのだとか。

 現在、公務員年金の支給額は月平均234万ウォン(約22万円)で、韓国の平均賃金相場の283万ウォン(約27万円)に近い数字になっている。

 しかし、高齢者の大半を占める国民年金受給者の支給額は、月平均31万ウォン(約2万9000円)と、日本の国民年金の月平均支給額5万5373円の半分程度にしかならない。

高齢者の収入は日本の4分の1以下

 また、民間企業に勤める社員には日本のような厚生年金はなく、老後は国民年金だけに頼ることになる。

 日本の高齢者は月平均16万円の収入を得ているが、韓国の高齢者は、日本円換算で3万6000円にしかならない。現在、ソウルの物価は東京と同程度だとよく言われるだけに、この金額で生活するのはかなり厳しい。

 また、企業では給与が高くなる50代半ばでリストラされる者が多いという。

 サムスン生命研究所が2018年に行ったアンケート調査によれば、平均退職年齢は57歳。ほとんどの者が、老後に備えて満足な貯蓄もできないうちに会社を追い出されるのが現実だ。

年金の投資先も“反日”を避けて通れず

 現在、多くの先進国では、老後の生活はほぼ年金で賄うのが一般的だ。しかし、韓国では年金だけで生活している高齢者は全体の20%以下という低い数字。

 多くの者が老後も日雇労働や自営業でわずかの収入を得ながら、国や各団体からの支援などに頼りながら生きている。

 また、韓国も少子化により年金の財源は先細る一方。受給額を少しでも増やすには、資金運用で利益をあげるしかない。しかし、お国柄か…、年金資金の投資先については色々と制約があるようだ。

 9月19日の聯合ニュースに、韓国の年金が日本の“戦犯企業”に投資されていることが問題化されているという記事が見つかった。

 戦時中に朝鮮半島からの徴用工を働かせていた三菱、住友などの戦犯企業284社に1兆6000億ウォン(約1500億円)が投資されていたというのだ。

 与党「共に民主党」の議員がこれについて、戦犯企業への直接投資は「国民の情緒に合わない」といったコメントをしている。

 少しでも受給額を増やし、高齢者の貧困率を改善しようと苦闘している保健福祉部(厚生省)の年金担当者からすれば、

 「そんなことで騒いでる場合じゃないだろ…」

 と、ため息の1つもつきたい心境だと思う。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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