大河ドラマや新1万円札で注目

大河ドラマや新1万円札で注目

旧朝鮮銀行本店(著者撮影)

 2021年大河ドラマ「青天を衝け」の主人公モデルとなった渋沢栄一は、500以上の会社を設立した明治期の起業王。2024年度に発行される新1万円札の図柄にも彼の肖像が採用されることで、さらに注目が集まっているのだが、実は、渋沢栄一を描いた紙幣は過去にも朝鮮半島で流通していた。

 日本が統治する以前、大韓帝国の通貨事情は混乱していた。大韓帝国政府は、銀本位制を採用し銅貨や銀貨を発行していたが、公認鋳型が偽造業者に貸し出されて贋銭が大量に出回っていた。同じ額面の銭ながら材質や重量には大きな差があり、商人から受け取りを拒まれることも多い。このため、人々は自国通貨よりも外貨のほうを信用し、日本円やロシア、中国などの貨幣が市中でも多く使われていたという。

 日本の第一銀行(みずほ銀行が継承)も、このころは朝鮮半島に進出して取引を盛んに行っていた。日清戦争後の1902年には、第一銀行券と呼ばれる約束手形を発行するようになる。その手形の表面に印刷されたのが、銀行創設者である渋沢栄一の肖像だったのである。

参考サイト
渋沢栄一、戦前も紙幣に登場 日韓併合直前の朝鮮で流通朝日新聞

朝鮮半島で絶大な信用力を誇った日本の銀行

朝鮮半島で絶大な信用力を誇った日本の銀行

大韓民国建国前まで使用されていた金允植とされる朝鮮銀行券 出典 朝鮮銀行(消滅) [Public domain], via Wikimedia Commons

朝鮮半島で絶大な信用力を誇った日本の銀行

 第一銀行は朝鮮半島内に16の支店と営業所を展開し、預金額は大韓帝国政府の年間歳出を上回っていた。大韓帝国政府よりもよっぽど信用力があり1円、5円、10円の3種類の銀行券が市中で広く流通するようになる。

 現代の香港で民間の各銀行が発行する銀行券が通貨として使われているが、それと同じことだ。渋沢栄一の肖像を描いた約束手形は、実質的に朝鮮半島で初めて流通した紙幣だった。

 日本による朝鮮併合後は、帝国議会で朝鮮銀行法案が可決される。中央銀行である朝鮮銀行が紙幣を発行するようになり、第一銀行券は回収されてその役割を終えた。流通した期間は、わずか4年程度ということになる。

 朝鮮銀行が新たに発行した紙幣の肖像には、朝鮮人らしき人物が描かれている。一説には旧大韓帝国閣僚の金允植(1835年-1922年)ではないかと言われる。渋沢栄一を描いた第一銀行券よりは、同胞らしき人物が描かれた朝鮮銀行券のほうが、当時の朝鮮人にも好感を持たれていたようだ。しかし、朝鮮半島で初めて流通した紙幣の肖像が日本人だったという事実は消し去りようがない。

新1万円札によって昔の屈辱が蘇る

新1万円札によって昔の屈辱が蘇る

2024年度発行予定の新1万円札の見本 出典 財務省 (Ministry of Finance Japan) [Public domain], via Wikimedia Commons

新1万円札によって昔の屈辱が蘇る

 その屈辱感が残り続けていたのだろう。日本の新1万円札に渋沢栄一の肖像が採用されるというニュースが韓国に伝わると、韓国マスコミがこぞって過敏な反応を見せた。たとえば、2019年4月10日のハンギョレ新聞では「日本の新紙幣の人物は経済侵略の張本人」と報じ、日本政府が紙幣の肖像に渋沢栄一を採用したことが、韓国人の感情を刺激するだろうと問題視している。また、保守系の中央日報でも同様に批判的な論調でこれを取り上げた。

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