「歩きスマホ注意」の標識を設置するも効果薄い

「歩きスマホ注意」の標識を設置するも効果薄い

真冬のソウルで見かけた歩きスマホする女性

 韓国でも「歩きスマホ」が問題になっているようで、それに関する報道もよく目にする。国や自治体でも最近では、その対策に本腰を入れ始めたようである。

 この国では、運転者の交通マナーが悪く、日本と比べると歩行者無視の危険な運転をよく目にする。

 歩行者側が注意せねばならないのだが、スマートフォンに熱中しているとつい油断してしまう。そのため、歩きスマホ中の歩行者が、車と接触する事故はかなり増えている。

 保険会社のサムスン火災が調査したところによると、2014年から2016年の間で「歩行中の不注意による事故」は6340件。そのうち61.7%が歩行中にスマホを操作していたことが原因だったという。

 ソウル市などでは2016年から「歩きスマホ注意」の標識を設置しているが、効果は薄い…。そもそも歩きスマホしている輩が道路標識など見ているはずがない。

 そこで当局も知恵を絞り、歩きスマホ対策の新兵器が導入されるようになった。

ハイテク機器を導入して対策に本腰

 最近、ソウル市街地の横断歩道には、従来の歩行者用信号に加えて、横断歩道手前の地面にLEDライトを埋め込んだ点滅ラインの設置が進められている。歩行者用信号に連動してラインが緑色に点滅するという仕組みだ。

 これなら、スマホをのぞき込んで、下ばかり見ている者にも「渡れ」の指示はすぐ伝わるし、歩道と車道の境も明確となるから、車との接触を避ける注意を促すこともできるというわけだ。

 この他にも、横断歩道にレーダーや赤外線カメラを設置して、歩行者が近寄ると交差点付近に設置された信号が点滅して運転者に知らせるというハイテクシステムも導入されつつある。

 しかし、「歩行者がいなくても横断歩道前では減速して注意するのが普通なのでは?」 

 そう思ったりもするのだが。なんせ「パリパリ(早く早く)!」 と、何事もせっかちなお国柄。街中でも、ついオーバースピードになりがちな暴走ドライバーが多いだけに、こういった設備も必要になってくる。

 また、民間からも歩きスマホ対策の様々なアイデアが寄せられ、最近は、SNSでも話題になることがよくある。

 たとえば、デザイナーのペン・ミンウク氏なる人物が開発した「第3の目」と呼ばれるデバイス。

 おでこに装着したセンサーが障害物に反応し、接触の危険があるところまで接近すれば、警告音を発するという仕組みに。

 これでスマホに目線を落としていても、安全に街中を歩くことができるというわけだ。


South Korean designer invents ‘third eye’ to keep smartphone addicts safe while walking

 第3の目の実機がこちら。

インフラの老朽化で危険度は増している

インフラの老朽化で危険度は増している

歩きスマホが危険であることには変わりない

 しかし、歩きスマホで危険なのは車だけではない。近年の韓国では、道路が陥没していたりマンホールの蓋が外れているなど、都市インフラの老朽化が問題になっている。

 2018年には、歩きスマホをしていた20代の女性が、蓋の空いていたマンホールに転落して大けがをする事故も起きている。

 また、車やマンホール以上に危険なのが同じ歩行者。前をよく見ずに歩いていれば、歩道上を移動している歩行者とぶつかる危険性はかなり高い。

 韓国では、ドライバーと同様に歩道を歩く人々も「パリパリ!」のせっかちが多く、歩きスマホをしていなくても歩行者同士が不注意でぶつかることは多い。

 しかも、激情気質な人が多いお国柄でもあり、つかみ合いのケンカに発展することも多々あるようだ。

 横断歩道を改修したり、ハイテクを駆使した対策グッズを導入しても、歩きスマホが危険なのは変わりがないようで、やはり、やらないに越したことはない。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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