盛んな海外進出を背景に増える韓国人移住者

盛んな海外進出を背景に増える韓国人移住者

トナム・ホーチミンの安宿街は、夜になると在住韓国人が飲みにやってくるエリアでもある。

 東南アジアのほとんどの国に今、韓国人移住者が増えている。多くが韓国の大企業の駐在員で、そこに追随した関連企業や仕入れ先もまた東南アジアに進出し、居住する韓国人向けのサービス業もやってくる。これはタイやベトナムの日本人社会にも見られる傾向であり、同様に韓国人の移住もサービス業などは特に個人事業や中小企業の社長自らが来るケースが少なくない。

 韓国は人口、国土面積共にアジア圏内では大きな規模とは言えない。人口は日本の半分である。しかし、物価面では、世界中と比較した水準では生活費は日本よりも高いとされる。そのため、市場規模を考えると韓国国内だけでビジネス展開していたのでは立ち行かなくなる。韓国芸能や自動車産業、家電などがいい例で、海外進出は必須だ。

韓国の習慣から開放されて寛容に

韓国の習慣から開放されて寛容に

バンコクの北朝鮮レストランも主要客は韓国人。対北朝鮮の感情も韓国人の中では日本に対するものと同じくらい複雑なのかもしれない

 競争社会の韓国では大企業に入ることが一番の安泰の道である。しかし、すべての韓国人が大企業に採用されるわけではない。そこに漏れた人は自分の力で這い上がるしかない。その際に国外に目をつけ、早々に自国を飛び出すという人もいる。

 こういった自分が生まれ育った地域を飛び出す韓国人は、比較的自由な発想をする人が多い傾向にある。バンコクで焼肉店を営む50代の韓国人男性は、本国では大学教授だったという。

「バンコクは国際的な街で、韓国人やタイ人だけでなく日本人や欧米人とも出会えることがメリットです。ここでは特に昔ながらの韓国のしきたりを気にせず、多くの人とお付き合いしていますよ」

 朝鮮半島は全域で、発祥の地である中国よりも根強い儒教文化がある。恩師を敬うという教えから、朝鮮地域では目上の人が絶対という風習がある。たとえば、目の上の人の前では基本的にアルコール類は飲まないし、たばこも吸わない。もし飲む場合、許しを得た上で飲んでいる様子を見せないという意味で顔を背けて飲む。特にたばこは厳しく、目上の人の前で韓国人は絶対にたばこを吸わないという。

 この男性は韓国に住んでいたころからその風習を目下に無理強いすることはなかった。それでも若い学生がたばこは吸わないにしても、自分の前で堂々と酒類を飲むことに多少の苛立ちがあった。しかし、バンコクに来てからはより寛容になり、負の感情や気持ちはなくなったそうだ。

儒教の教えも気にならない人が増えている

儒教の教えも気にならない人が増えている

韓国社会を包む重苦しい閉塞感からヘル朝鮮とも呼ばれる

儒教の教えも気にならない人が増えている

 ご存知のように日韓には歴史的な軋轢(あつれき)がある。特に韓国側に根深く、政治や日韓の交流に支障をきたすケースもある。年配になればなるほど日本嫌いの傾向が顕著な印象がある。しかし、釜山出身で、ベトナムはホーチミンに10年近く会社経営をしながら暮らす韓国人は、カタコトの英語でこう言っていた。

 「日本と韓国の関係はよくないが、それは昔のこと。これからは日韓は協力し合うことが大切だ。日本人はK-POPが好き。私は和食が好きなのだ」

 韓国の南部にある釜山と福岡間には高速船が就航している。釜山港と博多港はわずか3時間程度で、ちょっとした観光で双方を行き来する地元住民は少なくないという。この男性も釜山に住んでいたころは頻繁に博多に出かけ、和食を堪能していたと語った。

 日本人も海外移住者は、日本居住の人とは少し違った考え方をしている人が少なくない。韓国人も同様で、朝鮮儒教に縛られ、対日感情の悪い部分に思っていなくても同調しなければならない社会的な圧力に嫌気がさしている人もいるようである。こういった人々とまず日本人は手を取り合うべきなのではないだろうか。
 

高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)など。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)

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