2017年「国家核武力完成」後は非核化が交渉カードに

2017年「国家核武力完成」後は非核化が交渉カードに

2017年11月29日に国家核武力完成を伝える朝鮮労働党機関紙・労働新聞(提供 コリアメディア)

 北朝鮮による「国家核武力完成」宣言から4年が経つ中、非核化協議は一進一退の状況である。

 2017年11月29日、北朝鮮は、米国全土を攻撃可能な新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射実験に成功させ、国家核武力の完成を発表した。

 米国を射程に収めた核兵器の完成によって緊張が一気に高まったが、2018年に入ってから情勢は一変。

 北朝鮮は「非核化」をカードに、南北首脳会談、中朝首脳会談、さらに史上初の米朝首脳会談を実現させるなど、対話ムードに転換したのである。

 ただ、その後は非核化をめぐり米朝対話がこう着し、現在に至る。

 朝鮮半島の終戦宣言といった話題も出る中で、関心が寄せられるのは、「朝鮮半島の完全な非核化」である。

2019年米朝ハノイ会談以降、非核化協議がこう着状態

 2018年6月の米朝シンガポール会談では、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化を表明し、核実験およびICBM級ミサイルの発射実験の中止に同意した。主要施設である豊渓里核実験場の爆破も公開している。

 だが、米国が「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)を迫る中で、非核化の進め方を巡って認識の隔たりが生じた。

 2019年2月の米朝ハノイ会談では物別れに終わり、その後は対話を進展させることができないまま、ドナルド・トランプ前大統領は退任した。

 ジョー・バイデン新政権が今年4月に朝鮮半島の完全な非核化を最終目標に「調整された現実的なアプローチ」で対北交渉に取り組むとの方針を示している。

 だが、北朝鮮側は、「米国が対朝鮮敵視政策を撤回するまでは対話に応じない」と反発しており、現在もこう着状態は続いている。

 北朝鮮にとって、核兵器は対米交渉の最大の切り札であり、米国が条件を受け入れるまで非核化に応じることはないと言える。

 この間も北朝鮮は、ミサイル兵器の開発を着実に進めている。

米朝非核化協議は在韓米軍にも影響

 朝鮮半島の非核化を突きつめると、在韓米軍や、米軍の東アジア戦略にも影響がある。

 北朝鮮としては、「自衛のために核兵器を保有している」と繰り返し表明しているとおり、最大の敵対国である米国の脅威を完全になくすことを目標としている。

 そのため、北朝鮮は、朝鮮半島の非核化を根拠に、在韓米軍撤退や、韓国に提供する「核の傘」除去などを求める可能性がある。

 同じように、朝鮮戦争の終戦宣言が実現した場合も、北朝鮮は、「朝鮮戦争が終結したのだから、米軍駐留の根拠はなくなる」と訴えるだろう。

 だが、米国が、このような北朝鮮の要求に応じるとは考えにくい。

 米国は現在、対中国を念頭に、東アジアにおける軍事的プレゼンスを強化する方向に進んでおり、その中で在韓米軍は不可欠であるからだ。

 つまり、米朝対話や終戦宣言に向けた協議が進めば、在韓米軍の存在理由が問われることになり、米国にとって好ましい状況ではない。

米朝非核化協議が進展するまでミサイル開発を継続か

 北朝鮮は2019年2月のハノイ会談が物別れに終わって以降、新型短距離弾道ミサイルなどの発射実験を繰り返している。

 2011年末から始まった金正恩(キム・ジョンウン)体制では、現在までに100発近い弾道ミサイル発射実験が行われてきた。

 金正日(キム・ジョンイル)体制(1994年~2011年)におけるミサイル発射実験は、16発であったことを考えると、金正恩総書記がミサイル開発および国防力強化に力を入れてきたかがわかる。

 北朝鮮は、米朝非核化協議が進展するまでは、「自衛力強化」の名の下で、ミサイル能力向上および新型兵器開発を目指して、ミサイル実験を継続していくものとみられる。

八島 有佑
@yashiima

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