北朝鮮がウクライナ侵攻に初言及

北朝鮮がウクライナ侵攻に初言及

2019年4月25日、金正恩総書記とプーチン大統領が会談(提供 コリアメディア)

 北朝鮮外務省は2月26日、ウクライナ侵攻について、「米国が根本原因」と断じる学者の談話を掲載し、ロシアを擁護した。

 北朝鮮が今回の侵攻について言及したのは、これが初めて。

 ただ、ロシアが軍事侵攻した事実には言及しておらず、学者の個人名義の談話であることから、ウクライナ侵攻への公式的見解を明確にすることは避けたものとみられる。

外務省談話は米国非難が中心

 北朝鮮外務省は、国際政治研究学会のリ・ジソン研究士の名義で、「米国は国際平和と安定の根幹を崩してはならない」と題する談話を掲載した。

 しかし、主な内容はウクライナ侵攻ではなく、米国非難が中心。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領など、ウクライナ政権にも言及していない。

 談話は、「世界が現在直面している最大の危険は、国際平和と安定の根幹を崩している米国とその追従勢力の強権と専横だ」という書き出しから始まる。

 現在、世界中がウクライナ情勢を注視している中において、真の危険は、米国や追従勢力であるという主張だ。

 リ・ジソン研究士は、「米国が干渉する地域と国ごとに不和の種がまかれ、国家間の関係が悪化することが1つの法則のようになっている」と指摘し、過去のイラク戦争やアフガニスタン戦争などについて、米国と西側諸国の責任を追求した。

ウクライナ危機の原因は「米国の強権と専横」

 このように米国の責任を追求する中で、ウクライナ問題にも言及した。

 ただし、ロシアがウクライナに軍事侵攻した事実は取りあげず、「ウクライナ危機」(Ukrainian crisis)とだけ表現している。

 リ・ジソン研究士は、ウクライナ危機の根本的原因は、「ロシアの安全保障に対する正当な要求を無視して、世界的な覇権と軍事的優位のみを追求しながら、一方的な制裁と圧力のみにしがみついた米国の強権と専横にある」と指摘。

 また、国際メディアと専門家の見解を引用する形で、「ウクライナ危機の原因は、北大西洋条約機構(NATO)の一方的な拡大と脅威によって欧州の勢力均衡が破壊され、ロシアの国家安全が脅かされていることにある」と付け加えた。

 ロシアが今回の侵攻について、「ウクライナ政権に虐げられてきた人々を保護することが目的」としている主張に理解を示し、今回の事態の責任は、米国とNATOにあるという立場だ。

 談話では、北朝鮮が米国を非難する際に用いる「二重基準」という言葉も出して、「米国は、他国への内政干渉を世界の平和と安定のための『正義』と美化しているが、他国が自国の安全を確保するために講じた自衛措置を『不正義』や『挑発』と追いつめている」とも記述している。

ウクライナ侵攻への公式見解は見送り

 談話での北朝鮮の原則的立場は、「ウクライナ危機の原因は米国」として、ロシアを擁護するものと言える。

 ただ、政府当局者ではなく、学者の個人名義の談話であり、北朝鮮としての公式見解は見送られた形だ。

 繰り返しになるが、ロシアのウクライナ侵攻には言及せず、「ロシアを追い詰めたのは米国」という主張だけ残していることから、ロシアの軍事力行使への評価はあえて避けたとみられる。

 自国の軍力強化について、「敵国からの武力行使を阻止するために自衛力を強化している」という立場であることも影響してか、友好国のロシアとは言え、軍事力行使を積極的に認めることには慎重とも考えられる。

 北朝鮮としては、今後の事態の推移を見極めた上で、ウクライナ侵攻について公式的見解を示す可能性がある。

八島 有佑
@yashiima

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