韓国にとって他人事ではないウクライナ侵攻

韓国にとって他人事ではないウクライナ侵攻

9日に行われる韓国大統領選挙 出典 尹錫悦公式インスタグラム

 この記事を執筆したのは3月初旬のこと。韓国大統領選挙の結果については、まだわからないということを前置きしておく。

 この時点で、選挙の新たな争点として安全保障が急浮上していた。ロシア軍のウクライナ侵攻は韓国でも大きなニュースとなり、連日盛んに報道されている。それが選挙戦にも影響を及ぼしているようだ。

 ウクライナの出来事は韓国にとって他人事ではない。

 北朝鮮軍は38度線付近に無数の大砲を設置し、ソウル市街地を射程圏に捉えている。相手がその気になれば、いつでもソウルを火の海にできる。それだけに経済や新型コロナウイルス対応といった問題以上に切実な問題だ。

日本も無関係ではない韓国大統領選挙

 選挙戦最終盤の大切な時期。これに関して与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補、最大野党「国民の力」が推す尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が何を語るのか。国民も注目した。

 韓国大統領選挙は日本も無関係ではいられない。

 北朝鮮が韓国に侵攻した場合、日本は韓国政府に対して邦人保護を目的とする自衛隊機や艦船の派遣を求めることになるだろう。

 また、救援物資の輸送や機雷封鎖された港湾の掃海作業など、韓国が日本の後方支援を必要とする事態が起こるかもしれない。

 しかし、旭日旗を掲げた日本の軍隊が領内に入ることに反発する韓国民は多いはず。

 「有事の際に自衛隊の介入を認めるか否か?」

 この件に関する大統領候補たちの発言にも注目が集まったという。

尹錫悦「自衛隊の介入容認」発言は大失態か?

尹錫悦「自衛隊の介入容認」発言は大失態か?

日章旗を掲げる海上自衛隊・護衛艦いなづま

 日本との関係改善を目指している尹候補は、「自衛隊の介入を前提にはしていない」と前置きしながらも、「韓米日同盟があり、自衛隊が韓国内に入る事態もあり得る」と語っている。

 一方、李候補は、「絶対に容認しない」と全否定。また、与党陣営は尹候補の「自衛隊介入容認」発言を致命的な“失言”として、「日本にしっぽを振るのか?」などと激しくなじった。

 北との融和を第一に考える与党側からすれば、北朝鮮の侵攻よりも日本のほうが警戒すべき相手と考えているのかもしれない。

 ちなみに、2014年に韓国の民間シンクタンク「東アジア研究員」が行った世論調査では、軍事的脅威を感じる国として46.3%が日本を挙げており、北朝鮮に次ぐ“仮想敵国”となっている。

 2013年に他の民間シンクタンクが行った世論調査でも、日本を軍事的脅威だと回答した人は全体の62%に。

 また、2017年に非営利シンクタンク言論NPOによる「第5回日韓共同世論調査」では、韓国民の7割が「日米、米韓などの同盟問題」について懸念しているという結果が出ている。

 この数字を見ると、確かに韓米日同盟の存在を認めたり、自衛隊の介入を容認するような尹候補の発言はまずかったかもしれない。

支持率は与党・李在明が巻き返しつつある

支持率は与党・李在明が巻き返しつつある

3日発表の野党候補一本化で厳しくなったとも伝えられる李在明候補 出典 李在明公式ツイッター

支持率は与党・李在明が巻き返しつつある

 さて、ここで両候補の支持率を見てみよう。韓国の世論調査会社「ギャラップ」が2月18日に発表した支持率によれば、与党・李候補が34%。これを野党・尹候補が41%で大きく引き離していた。

 それが自衛隊の介入が論議されるようになってからどう変わったのか。今月2日に最新の支持率が発表されたが、それによると、尹候補46.3%、李候補43.1%とその差はかなり縮まっている。

 この数字は、尹候補の“失言”の影響も反映しているのだろうか。

 大統領選の結果は、まだわからないが、もしも尹氏が敗れることがあれば、その最大の戦犯は、日本の自衛隊…か?

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。 

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