このように日本政府は、事件について「記録が見当たらない」ことなどを理由に、虐殺事件がどのように発生したのか、日本政府が事件にどのように関わったかなどについて認識を示していない。

 震災から3か月後の1923年12月に衆議院本会議の中で山本権兵衛首相が事件について、「目下取り調べ進行中」と言及しているが、それ以降調査の有無や進捗状況は発表されていないまま今日にいたっているのだ。
 

真相解明に向けた官民一体となった調査に期待

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横網町公園

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 朝鮮人虐殺事件の真相解明と責任追及に関わっている金哲秀氏(朝鮮大学校在日朝鮮人関係資料室長)は取材に応じ、日本の消極的な姿勢について、「日本政府が朝鮮人虐殺事件を事実だと認めることは、明治以降の近代日本としてのアイデンティティや植民地支配の正当性を否定することにつながるという危機感があるのではないか」と指摘した。

 また、事件の犠牲者数に関する論争については、「朝鮮人虐殺事件が『大虐殺』であったことは疑いがない事実である。数が明確ではないというだけで決して事件を矮小化したり、事件の存在自体を否定したりすることがあってはならない」と強調した。

 さらに、日本政府が調査に取り組む意義として、「日本政府であれば、軍や警察の事件に係る保管資料などを幅広く調査することが可能であり、朝鮮人虐殺事件の全容解明に近づくことができる」と説明した。

 最後に、今後の活動について質問したところ、金哲秀氏は、「当時のことを知る人への聞き取りは難しくなっているが、新聞、日記といった資料発掘などを引き続き進めていき、虐殺事件の全体像を解明していきたい」と語った。

 90年以上が経つのにいまだ解明が進んでいない朝鮮人虐殺事件。

 日本政府には、肯定も否定もせずに事件をうやむやにするのではなく、しっかり調査を行った上で見解を示すことが望まれる。

八島 有佑

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