中国→タイ→タイプラスワン

中国→タイ→タイプラスワン

ベトナムは若い人の向上心も高く、語学学習も盛んだ(ホーチミン・2017年撮影)

 新型コロナウイルスで海外旅行もままならない現状だが、企業各社は立ち止まるわけにはいかない。こんな状況でも、様々な形で日本企業が海外進出している。

 そんな中、海外進出を目論む企業の多くが、今ベトナムに注目している。20年、30年前であれば中国が海外拠点先だったが、反日感情などによるトラブルを考慮した結果、東南アジアのタイが人気の進出先となった。

 しかし、比較的親日であり、勤勉な気質のタイに魅力を感じたものの、中国拠点を失ったトラウマを抱える日系企業は「タイプラスワン」といったムーブメントの中、タイ拠点ともう1つ、別の国にも拠点をと模索し続けてきた。

1度は見限られたベトナムが再注目

 ブームはベトナム、カンボジア、インドネシア、ミャンマーなどに都度移り変わり、数多くの日本人企業戦士が現地視察をした。結果、タイほど魅力のある国がないと判断され、その後もタイへの進出が増加しつつあった。

 ところが、1度は見限られたベトナムが、また移転先の候補として人気が出てきている。かつては社会主義国で、会社設立さえも複雑な賄賂が必要で、ままならないと諦められていたが、すでに進出している日系企業も増えて情報が出回るようになったため、改めてベトナムへの進出機会を伺う企業が増えているのだ。

 日本の各県にある中小企業支援センターも、これまでタイ拠点を推奨していたのが、2019年ごろからは、ベトナムというワードが彼らの口からも出始めているほどだ。

魅力的な外国企業向け税制優遇措置

 ベトナムは人口がおよそ9700万人。タイはおよそ6700万人になる。最低賃金は、厚生労働省東京労働局の2018年度調べを参照すると、ハノイ・ホーチミンがおよそ120円、バンコクが約140円だ。国の位置も太平洋側にあり、フライトでも船便でもタイよりもずっと日本に近い。また、ベトナム人自身も勤勉だ。几帳面で温厚で、親日的な人が圧倒的に多いのも魅力である。

 さらに、外国からの企業に対しては税制優遇措置もある。ベトナムの法人税標準税率は20%。優遇措置は大別して優遇措置と減免税になる。優遇措置は、事業内容や設立地域の性質を考慮して10~15年間、あるいは国内で活動中は10~20%の優遇税制になる

 減免税は同条件下で「4年免税・その後9年50%減税」、「4年免税・その後5年50%減税」、「2年免税・その後4年50%減税」のいずれかが適用される。

優遇措置を最大限利用し特別扱いされるサムスン

優遇措置を最大限利用し特別扱いされるサムスン

「2014年投資法」の特別優遇にかかる業種にはハイテクやITのほか、電子製品や自動車関連など一般分野を始め多岐に渡る

 また、「2014年投資法」では、第16条第1項により特定の業種において外国企業の投資を奨励する措置がある。たとえば、プロジェクトの実施期間すべてにおいて通常の税率より低い法人所得税率の適用か法人所得税の減免、固定資産や原材料、部品に対する輸入税の免除、土地賃貸料、土地使用料、土地使用税の減免などだ。

 これらを最大限に利用していると言われるのが韓国企業だ。サムスンにおいては、スマートフォンの巨大工場を2か所、ベトナム国内に置いている。報道によれば、この2拠点の2019年税引き前利益は、およそ3800億円にもなる規模だ。

 しかも、新型コロナウイルスで外国からの入国者をいち早くシャットダウンし、現在も国ごとほぼロックダウン状態にあるにも関わらず、ベトナム政府はサムスンのエンジニアを何度か100人単位で特別に入国許可している。完全に特別扱いだ。

 先の工場2拠点は世界のスマートフォンの5割を生産し、サムスン製品はベトナム総輸出の25%も占めるからという事情もある。

 こういった特別扱いも社会主義国ならではとも言え、ベトナム進出に魅力を感じる日本企業はこれからも増えることだろう。

高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)など。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)

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