ドイツの新聞にNord Koreaの大見出し

ドイツの新聞にNord Koreaの大見出し

一面でCITY HOSTEL BERLINを紹介する南ドイツ新聞

ドイツの新聞にNord Koreaの大見出し

 この夏、家族とドイツ旅行をした。東西分断を乗り越え、欧州の中核国になった現状を見て、今後の朝鮮半島を考えたいと考えたからだが、滞在期間中、ふと手にした新聞に、「Nord Korea」の大きな見出しがあった。

 これはドイツ語で北朝鮮のことだ。北朝鮮が大使館の敷地内で運営しているとして話題になった若者向けのホステルに、ドイツ政府が手を焼いているという内容だった。その理由は何なのか。昔大学で学んだドイツ語の辞書を引っ張り出して読んでみると、外貨稼ぎに執着する北朝鮮の懸命さが浮かび上がってきた。

北朝鮮大使館内で格安ユースホステル経営

 この記事が載ったのは、ミュンヘンに本社がある『南ドイツ新聞』だ。左翼系の高級紙として有名で、この北朝鮮ホステルの問題を継続して追及しているようだ。

 1ページを丸々割いた長文の記事が取り上げているのは「CITY HOSTEL BERLIN」だ。若者向けの簡易なユースホステルようだ。2008年にベルリンにある北朝鮮大使館の施設内にオープンした。

 ホームページもちゃんとある。https://www.cityhostel-berlin.com/bilder_galerie_hostel_berlin.aspx

 そこに掲載されている館内写真を見ると、部屋は簡単な作りで、ビリヤード場やバーなども併設されているようだ。場所は、ベルリンの顔であるブランデンブルグ門と、かつて東西ベルリンの通行口であった「チェック・ポイントチャーリー」の中間点に位置するという。
  
 地の利が抜群だ。だが、魅力は何と言っても宿泊代の安さだろう。最低12ユーロ(約1400円)からだという。文化都市ベルリンの人気は高く、この値段で泊まれるところはまずない。「夏には空き部屋がないほどだ」と地元の観光関係者は話す。

冷戦後、広大な敷地と施設が余り賃貸業を始める

 北朝鮮大使館の敷地は約6000平方メートルもある。ちょっとしたサッカー場ほどの広さだ。崩壊前の東ドイツと北朝鮮が密接な関係を結んでいたため、こんな広大な敷地をもらったらしい。

 かつては30人の北朝鮮外交官が駐在し、北朝鮮の欧州外交を担った。1990年の東ドイツの崩壊、東西統一によって活動に制限がかかったため、今は10人程度に減っている。施設も余ってしまい、ジムや、クリニックに貸し始めた。

 2008年からは、「EGI GmbH」というトルコ系のホスル運営会社に委託して、本格的にホステルを運用している。

 問題は、ここからの収入が、国連の安全保障理事会の北朝鮮制裁決議2375の違反に該当する点だ。

(続く)

五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)など。

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