日本政府も迅速に行動した。海上保安庁のヘリコプターが工作船を追跡して照明弾を投下し続けた。これによってKCIAの工作員たちは、金大中を日本海に投棄して殺害するという当初の計画を断念、生きて韓国に上陸することがきた。

 その後は、自宅軟禁を経て刑務所に送られる。1979年に政敵の朴大統領が暗殺された後に政界復帰するが、1980年の光州事件で再び逮捕され死刑判決を受けた。この時にも日本政府が当時の全斗煥大統領を説得し、米国への出国を条件に死刑執行を停止させている。
 

北朝鮮による日本人拉致事件のヒントにもなった!?

北朝鮮による日本人拉致事件のヒントにもなった!?

2001年2月ロシア・プーチン大統領と会談する金大中大統領 出典 Kremlin.ru [Public domain], via Wikimedia Commons

北朝鮮による日本人拉致事件のヒントにもなった!?

 金大中には、再三の危機を日本によって救われたという感謝の念もあったのだろうか。 1998年~2003年の金大中政権下では、韓国の“お家芸”とも言うべき日本批判は鳴りを潜め、日韓共催サッカー・ワールドカップを実現させるなど協力関係が保たれていた。戦後、日韓関係がもっとも良好な時代だったと言えるだろう。

 また、これは余談ではあるのだが…、誘拐に工作船を使うという手口は、北朝鮮が行った一連の日本人拉致事件に手口がよく似ている。ちなみに、北朝鮮の犯行が疑われる拉致事件は1973年頃から起きており、その後、70年代後半には、日本政府が北朝鮮の犯行を断定した拉致事件が多々ある。いずれもこの金大中事件の後に発生したものだ。ひょっとして、韓国の手口を真似たものか。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)などがある。

日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社)2021年8月30日発売予定

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