かつて金剛山観光で6億ドルが北朝鮮へ流入した疑念

 金剛山観光については、かつて韓国の野党が、「観光事業関連の代金約6億ドル(約657億円)が北朝鮮軍や労働党に流入した疑いがある」と主張したこともある。兵器開発や、統治資金に流用された疑いが強い。

 個別観光が実現しても、観光収入は以前に遙かに及ばないだろう。しかし、「北朝鮮の完全非核化」を求める米国は、さっそく難色を示し、韓国政府との摩擦を起こしている。肝心の北朝鮮もまだ、前向きな反応を示していない。

 観光客の安全対策、米国の反対、北朝鮮の無関心など課題は多い。しかし、韓国の専門家たちは、多少無理をしてでも、実現すべきだと主張している。

新型コロナウイルス感染拡大で北朝鮮は観光客の受け入れ全面停止

 金正恩朝鮮労働党委員長は、観光開発での経済再建を目指すが、空回りしているのが実状だ。ここで韓国からの観光が再開されれば、正恩氏の「メンツ」が立ち、南北関係や、米朝関係も動き出す…。

 ただ、ここに来て新たな難題が降りかかってきた。新型コロナウイルスによる肺炎の拡大だ。北朝鮮は、肺炎の流入を恐れ、海外からの観光客の受け入れを中止してしまったのだ。

 金剛山は標高1639メートルと、そう高い山ではないが、朝鮮半島では日本の富士山のようにあがめられ、さまざまな言い伝えが残る名山だ。

 その山は、いまだ深い霧に包まれ、見通しが利かないままだ。


シンガポール船で観光開始 北朝鮮・金剛山

 2013年5月20日に実施されたツアー。

五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)など。

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