そもそも北朝鮮からすれば、南北関係は米国が介入すべき問題ではないからである。たとえば、クォン・ジョングン外務省北米局長は6月11日、北朝鮮が南北間の通信連絡線を遮断したことに米国務省が「失望した」と表明したことについて、「北南関係は民族内部の問題で、誰も口出しする権利はない」と主張している。

 このように北朝鮮の立場では、南北関係は民族問題であり、ある意味「朝鮮」という国の国内問題なのだ。

 それなのに韓国政府が米国の対北方針に配慮して南北対話を進めようとしないため、北朝鮮はかねてより非難を重ねてきたのである。

 今年4月の総選挙で文在寅政権が大勝して盤石な基盤を確立したが、韓国側は変わらず南北関係を大きく進展させようとしなかった。

 北朝鮮側としても、もうこのままでは韓国に期待できないと見て、揺さぶりなのか諦めなのかは不明だが、金与正談話を発表するに至ったと考えられる。
 

北朝鮮は韓国との関係を本当に断絶するのか?

北朝鮮は韓国との関係を本当に断絶するのか?

南北関係の転機となった2018年2月の金与正氏と文在寅大統領の会談(提供「コリアメディア」)

北朝鮮は韓国との関係を本当に断絶するのか?

 気になるのは、北朝鮮の強硬姿勢の本気度がどれくらいかである。

 北朝鮮は、今なお米朝交渉を視野に入れていると考えられるが、その中で南北関係をどのように位置づけるかは判断しがたい。

 だが、北朝鮮側はこれまで何度も韓国政府を非難してきたが、今回の金与正談話は、2018年4月に初めて金正恩委員長と文在寅大統領が初会談して以降では最大レベルの警告と言える。

 そのため、直接的な軍事行動はともかく、北朝鮮が予告している南北共同連絡事務所の取り壊しを早期に実行する可能性は十分にある。

 文在寅政権も、金与正談話など一連の北朝鮮の行動に込められた強いメッセージ性を感じ取ったからこそ、体制批判のビラ散布禁止に向けてスピーディーに動き出したのだろう。

 韓国政府がもし南北関係を維持したいのであれば、北朝鮮が求める「行動」をとらなければならない。

 北朝鮮がどのレベルの行動を及第点とするかは不明だが、少なくともビラ散布の禁止は最低限の条件と言って良いだろう。

 韓国メディアによると、前述の告発された脱北者団体クンセムのパク・ジョンオ代表は、6月21日に米やマスクなどを入れたペットボトルを海に流し、北朝鮮に送る計画を強行すると主張している。

 また、同様に告発された自由北韓運動連合は、朝鮮戦争勃発70年目の6月25日に風船やドローンなどを使って金正恩政権を批判するビラ100万枚を散布することを明らかにした。

 少なくとも韓国政府がこれらを阻止できなければ、文在寅政権が築き上げてきた南北関係はいよいよ破綻することになるだろう。

八島 有佑

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