1日だけのアンコール公演ザ・ラストクイーン2021

1日だけのアンコール公演ザ・ラストクイーン2021

旧李王家東京邸(赤坂プリンスクラッシクハウス)

 2021年10月28日、東京の日本橋にある日本橋劇場(日本橋公会堂)において、田月仙さんプロデュースのオペラ「ザ・ラストクイーン 朝鮮王朝最後の皇太子妃」を見た。2021年は、この日1日だけの特別公演だった。

 田さんと宮塚父娘は旧知の仲で、『チュッペ』にも寄稿していただいたことがある。今回は2015年に初公演からのアンコール公演であり、今後もまた継続していくことである。

かつての宮中大礼服を再現

 今回は、僭越ながら私の感想を述べたい。

 ザ・ラストクイーンは、約500年続いた朝鮮王朝の最後の皇太子の李垠に嫁いだ日本の皇族出身の梨本宮方子(李方子)の激動の人生を約80分の公演で第8部に分けて描いている。国境を越えた愛の物語である。

 日韓近現代史において、李方子の存在は、とても重要であるにも関わらず、国を象徴するような存在でもあり、その立場や使命を重んじられ、感情をあらわにすることはなかった。

 このオペラでは、田さんが魂の底から声を発するように歌い表現したことは、まさに圧巻の一言であった。

 第8部の中で最も盛り上がるシーンとして、第4部の李方子が20歳、1922年に初めて朝鮮に渡り、宮中大礼服を着て大髪を結って結婚の儀の部分ではないだろうか。このオペラのために、大礼服を再現したという。

李方子と玖親子で縁がある旧李王家東京邸

李方子と玖親子で縁がある旧李王家東京邸

赤坂プリンスクラッシクハウスとしてアフタヌーンティーも楽しめる

李方子と玖親子で縁がある旧李王家東京邸

 しかし、幸せもつかの間、生まれた長男の晋は謎の死を迎える。毒殺された説がある。朝鮮王朝の殺人の方法としては常套である。このオペラでは描かれてはいなかったが、次男として玖が生まれている。彼は、兄の晋が幼くして亡くなっているのに対し、彼もまた国際結婚をし、事業の失敗など激動の73歳の生涯を閉じている。

 しかも最期は、東京の赤坂プリンスホテル滞在中に心臓麻痺で死去している。この赤坂プリンスホテルは、かつての「旧李王家東京邸」であり、李方子も住んでいたところである。

 美しいチューダー様式の洋館は、2011年に東京都指定有形文化財に指定されている。現在は、赤坂プリンスクラッシクハウスとして、結婚式やレストランとしての施設として利用されている。

 私も何度かアフタヌーンティーを楽しむために、利用したことがある。東京都千代田区の紀尾井町にあり、大都会の中で、かつての日韓の近現代史の重要な舞台であったことを思い浮かべながら、喫茶することは朝鮮半島に関わる人間としては至極の喜びである。

李王朝から日本の華族へ嫁いだ徳恵翁主

李王朝から日本の華族へ嫁いだ徳恵翁主

1930年(昭和5)竣工の旧李王家東京邸内装

李王朝から日本の華族へ嫁いだ徳恵翁主

 日韓近現代史において、その激動の時代に翻弄された人物として、逆に韓国の李王朝から日本の旧華族に嫁いだ女性、徳恵翁主の存在にも触れておきたい。

 彼女は、李垠の妹であり、李方子とは親族関係にある。その2人の関りなどなかなか史実で確認することは難しいが、徳恵翁主の人生を描いた韓国映画「ラスト・プリンセス 大韓帝国の皇女」に李方子も登場し、フィクションである部分もあるが、映像資料として私も教え子たちに授業で紹介している。

 最近、日本の皇族の眞子さまのご結婚で皇籍離脱が話題になっているが、かつて、日韓で自分の意志とは関係なく、政略結婚をさせられ、時代に翻弄された女性皇族がいたことを思い出すきっかけにもなってほしい。

ザ・ラストクイーン公式サイト

宮塚 寿美子(みやつか すみこ)
國學院大學栃木短期大學兼任講師。2003年立命館大学文学部卒業、2009年韓国・明知大学大学院北韓学科博士課程修了、2016年政治学博士取得。韓国・崇実大学非常勤講師、長崎県立大学非常勤講師、宮塚コリア研究所副代表、北朝鮮人権ネットワーク顧問などを経て、2014年より現職。北朝鮮による拉致被害者家族・特定失踪者家族たちと講演も経験しながら、朝鮮半島情勢をメディアでも解説。共著に『こんなに違う!世界の国語教科書』(メディアファクトリー新書、2010年、二宮皓監修)、『北朝鮮・驚愕の教科書』(宮塚利雄との共著、文春新書、2007年)、『朝鮮よいとこ一度はおいで!-グッズが語る北朝鮮の現実』(宮塚利雄との共著、風土デザイン研究所、2018年)、近共著『「難民」をどう捉えるか 難民・強制移動研究の理論と方法』(小泉康一編者、慶應義塾大学出版会、2019年の「「脱北」元日本人妻の日本再定住」)。

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