横網町公園で毎年9月1日に開催されている追悼式典に歴代都知事が追悼文を送付してきたが、古賀都議は小池百合子都知事に再考を促したのである。
 結果的に小池都知事はこの年から追悼文送付を取りやめており、今年も同様の方針を示している。
 

日本政府は公式見解を示さず

 繰り返しになるが、追悼碑が建てられた当時は6661人説が主流であったためで誇張する意図がなかった。もちろん「正しい歴史教育」という観点で追悼碑の近くに「正確な犠牲者数」を併記することも選択肢としてあり得る。

 そのためには日本政府として事件について向き合うことが不可欠であり、真相解明に向けて調査に取り組むべきだ。

 だが、山本権兵衛首相(当時)は1923年12月の衆議院本会議の中で、一連の朝鮮人殺害事件について「目下取り調べ進行中」と表明して以降、現在に至るまで政府の調査が進むことはなかった。

 2008年3月に内閣府の中央防災会議は「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」の中で、事件の犠牲者は「震災による死者数の1から数パーセント」(千人から数千人の計算)という推計値を出した。この数字が政府見解になるかと思われたが、日本政府はこの報告書を「有識者が執筆したもの」として内容について認否を明らかにしなかった(衆質一九三第二五〇号、2017年安倍政権)。

 犠牲者数に関する質問主意書に対しても、日本政府は「調査した限りでは、政府内にそれらの事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」などとして回答を控えている(衆質一九五第九号、2017年)。

 このように事件について「明確な回答を避ける」ことが政府見解のような状況となってしまっている。

事件100周年を前にして官民一体での調査に期待

 だが、二度とこのような悲惨な事件が起こらないように虐殺事件の実態を調べることには大きな意義がある。

 日弁連は2003年に内閣総理大臣に対し、「国家としての責任を認めて謝罪するとともに、虐殺事件の真相を調査して原因を明らかにするように」との勧告を出しているが、いまだに調査は行われていない。

 前述の古賀都議が「事実と反している主張は日本や日本人に不利益になる」と言及しているが、真実が他にあるならば日本政府も積極的に公式見解を示してもいいように思える。

 官民一体での調査は真相解明に向けて大きく前進することが期待できる。現在では、正確な数字を知ることは困難かもしれないが、それでも各地の警察署に残る当時の資料などを調べれば新たに判明することは多いはずだ。

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