知名度を上げたハマグリのガソリン焼き

知名度を上げたハマグリのガソリン焼き

海辺以外でも楽しめるハマグリのガソリン焼き

 アバイスンデ、スンデクッパ、冷麺など北朝鮮には美味しいグルメは数多く存在するが、やはり忘れてはならないのが「ハマグリのガソリン焼き」通称“ハマガソ”だ。

 最近では「Netflix(ネットフリックス)」で人気を集めている海外ドラマ「愛の不時着」で一気に知名度を上げた。料理(というか調理方法なんだが)そのものは有名ではあるが、詳しく知らない人は少なくないだろう。

 そこで今回は現地民ならず、世界の人々を魅きつけるハマガソの魅力を紹介しよう。

南浦特別市の名物料理

 まず北朝鮮の食文化は、朝鮮半島全体における北部地域の郷土料理という位置付けになる。食文化の根底にあるものは南北で共通するが、一般的に南部と比べて味付けが淡泊。キムチも唐辛子が少ない白キムチや水キムチなどあっさりとしたものが特徴的だ。

 ハマグリのガソリン焼きは南浦特別市で生まれたとされる。現地では「チョゲ(貝)プルコギ」と呼ばれている。北朝鮮では特別な食べ物として扱われており、貴重なゲストが来たときに美味しい焼酎と一緒に振る舞われるという。

ハマグリのガソリン焼きの調理方法とは?

 調理方法は超簡単でハマグリにガソリンをぶっかけて火をつけるだけ。燃えさかる炎で一気にハマグリを焼き上げて旨味を閉じ込めるという大胆な調理法(シンプルすぎ)。下記の動画で燃えさかるハマガソをご覧いただきたい。

1.ムシロを敷き、ハマグリの尻を上にして隙間なく並べる(ハマグリの外周に石を敷き詰めるとベスト)。
2.ハマグリに直接ガソリンをかけて点火。
3.切れ目なくガソリンを注ぎ入れて燃やす。
4.ハマグリの尻から泡が出始めたら煮えた合図で完成となる。

 非常に強い火力のためハマグリは開くことなく息絶える。そのため貝の中にガソリンが入ることはない。ナイフで貝をこじ開けて身を食べる。塩気が効いているので調味料は要らない。ガソリンの代わりにアルコールを使えば高級料理の位置づけになるのだとか。

食あたり防止に焼酎一気飲み

 日本国内の北朝鮮旅行を手配する代理店では、国内でハマガソツアーなどの企画もある。海外渡航が制限されているコロナ禍ならではの集客イベントと言えそうだ。

 ハマガソは、夏の浜辺でというイメージがありそうだが、実は冬や山でもオプションとしてリクエストすれば食べることができる。

 ハマガソその料金は1人で北朝鮮ツアーへ参加してもガイド2人と運転手の計4人分の量が最小注文となるので決して安くはない。

 ハマグリを一気に焼き上げるガソリンはツアー客が乗車していた自動車から抜き取ってくることも多く実にワイルドだ。

 当然ながら頭をよぎる疑問として「衛生面」がある。現地ガイド曰く、「ハマグリと一緒に朝鮮焼酎を体内へ流し込んで消毒すれば食あたりや腹を下したりなどはしない」だそうだ…。


Nampo Petrol Clams BBQ, Korean BBQ North Korea Style (May 2019)

井上 一希
フリー編集者。マガジンハウス「anan」、宝島社「sweet」、読売新聞ライフスタイルページの編集担当。好きな食べ物は「冷麺」。

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