国連制裁に違反しない観光業
中国の習近平国家主席が6月20、21日に北朝鮮を訪問した。何立峰国家発展改革委員会主任など経済の実務者も同行しており、農業・観光・教育などの分野で交流、協力することが決まった。
それからわずか1か月。北朝鮮への中国人観光客が、一気に拡大しているようだ。観光は、国連安全保障理事会の制裁決議に違反しない合法的な外貨稼ぎ分野だからだろう。
北朝鮮は今年、厳しい水不足に見舞われ、食糧不足が心配されているが、中国からの外貨で一息ついているのかもしれない。
中国国営の「新華社通信」のネット版が26日、突然、北朝鮮の金春姫国家観光総局長とのインタビューを大きく伝えた(我们愿尽最大可能为外国游客提供优质服务——访朝鲜国家观光总局观光宣传局局长金春姬)。
中国企業の投資歓迎
新華社の記者が平壌を訪問したときのものだ。自分の机に座る金局長はこの中で、外国観光客に対するサービスを強化すると約束した。具体的には、携帯電話のローミングと、ホテルの無線インターネットサービスを、早期に導入するため「懸命に努力している」と明らかにしたのだ。
まさかと目を疑う発言だった。よく知られている通り、北朝鮮は、通信鎖国だ。
国内には、すでに600万台の携帯が普及しているが、基本的に国外にはつながらない。価格の高いSIMカードを購入して携帯に入れれば使えるが、実用的ではない。もちろんWi-Fiサービスもほとんどない。
これは平壌の情報を外に漏らさないためだろうが、これではさすがに、好奇心旺盛で、携帯大好きな中国人を呼び込めないと考えたのだろう。
金局長はまた、各地の観光開発を進める一方、年配者の交流旅行、飛行愛好家のための旅行、自転車旅行なども計画しているという。
「年配者の交流」とは何なのか、よく分からないが、ホームステイのようなものを指すのかもしれない。飛行愛好家旅行も気になるが、まあ見守ろう。
北朝鮮は手つかずの観光地が多く、開放が進めば世界の旅行マニアがあつまるだろうが、金局長は「北朝鮮の観光産業は劣悪なインフラなど改善の余地が多い」と率直に認めている。そして、中国の企業家に対して「積極的に投資してほしい」と呼びかけていた。狙いは、この部分だろう。
外国人観光客の9割が中国人
北朝鮮が、中国企業に熱い視線を送る理由がある。手軽に、中国の昔を思い出せる北朝鮮ツアーは最近、中国人の間で人気が高まっている。金局長も昨年の外国人観光客は20万人で、うち9割、約18万人が中国人だったと明らかにしている。