日本政府の姿勢は度々変化している

日本政府の姿勢は度々変化している

阿部浩己明治学院大教授(2019年9月5日・日本記者クラブ)

 日韓関係悪化の原因となっている元徴用工問題について、日本政府は「わが国の一貫した立場に基づき、引き続き韓国側に適切な対応を強く求めていきたい」(菅義偉官房長官)と、韓国側の対応を求めている。「1965年の日韓請求権協定で解決済み」、これをひっくり返す韓国の大法院判決(昨年10月)は、「国際法違反」というおなじみの主張だ。

 しかし日本政府の姿勢を詳細に検証すると、実は姿勢は度々変わっていた。また、日本の裁判所が、戦前日本の企業が朝鮮半島出身者を強制労働させていたと認定し、被告となった日本企業の中には、和解に応じていたケースもあった。この「不都合な真実」を菅官房長官はどう説明するのだろうか。

不都合な真実を阿部浩己明治学院大学教授が明かす

 日本政府の姿勢の変遷について語ったのは国際法、国際人権・難民法を専門とする明治学院大学の阿部浩己教授だ。9月5日に日本記者クラブで行った会見で明らかにした。

 まず、日本政府は、当初「個人請求権は消滅していない。訴訟は起こすことができる」と、日本国民に説明していた。これは、空襲や原爆などで受けた被害の賠償を国連や米国に訴えることができるという意味だった。

分かりにくいが、こういった被害の責任は戦争を起こした日本政府にある。だから、賠償が実現しなければ日本政府が、代わりに国民から訴えられる危険があった。このため、サンフランシスコ講和条約で日本国としてこの権利を行使できなくなっていますよ。個人として訴訟を起こしてください、というアピールだった。いわゆる「外交権の放棄」と言われるものだ。

日本の裁判所が日本企業に損害賠償責任を認める

 ところが、1990年代になって、状況が変わる。

 戦前に韓国から日本に来て、炭鉱や鉄工所などで働いた人たちが、日本企業を訴える裁判が相次いだ。裁判を起こすことは可能だったからだ。

 このため、日本政府は、「(サンフランシスコ平和条約により)請求に応ずべき法律上の義務が消滅したとされるのであり、その結果、救済が拒否されることになる」(2001年3月22日参議院外交防衛委員会、海老原紳外務省条約局長答弁 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/151/0059/15103220059004.pdf 13ページ)と解釈をひっそりと転換する。つまり、権利はあるが、裁判でも救済されないとしたのだ。これにより日本で提訴する動きは止まり、訴訟の舞台は韓国に移っていく。

 ところがこの間、日本では、「日本製鉄大阪製鐵所」を相手にした元徴用工損害賠償請求訴訟(大阪地判2001年3月27日)で、韓国人の原告に対し「実質的にみて、強制労働に該当し、違法と言わざるをえない」との判決が出た。

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